サハラが結ぶ南北交流/私市正年


 世界史リブレット60巻目。タイトル通り、サハラ交易をメインに、巡礼なども視野に入れた南北交流史。
 
 ブラック・アフリカの歴史は自ら文字をもたない人々が、北方の人々に観察・記録されてきた歴史であった。そこには自ずから偏見が入り込み、正確とは言いがたい歴史像ができあがる。本書は、その歪みをできるかぎりただし、詳細に述べることを目的としたものである。
 サハラ以南のアフリカというと、世界史Bの教科書でもあまり出てこず、細々と北との交流があったように思われがちだが、サハラを通る南北交易路は、国家が命運を賭して確保しなければならないほどの重要性を持っていた。サハラを超える塩金交易は、ベルベル帝国がスペインに侵入したことをきっかけとしてスペインまで繋がり、各地での金貨の鋳造に影響を与えた(交易路を押さえていたファーティマ朝時代はエジプトでも金貨が流通したが、アイユーブ朝、マムルーク朝と時代が下るにつれて国内向けの貨幣は銀貨、銅貨へと変わっていったという)。
 時代が下ると金に加えて織物や銅の生産がはじまり、さらに西欧の諸勢力が進出し、後に奴隷貿易の時代がはじまり、アフリカの人的資源が奪われてしまうようになる。

 通史としてもよくできているが、個別の論点も例えばサハラ交易で巨富を蓄えたマッカーリー家についてや、有名なマンサ・ムーサのメッカ巡礼など、興味深いものがある。
 アフリカ史はなかなか本が無いので、貴重な一冊と言えるだろう。
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鉄勒京二

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