宗教改革の真実/永田諒一


 副題は「カトリックとプロテスタントの社会史」。宗教改革期の人々の日常の暮らしに焦点を当てる。
 
 第一章で社会史研究の発展に頁が割いてあるが、そこで書いてある通り、社会史とは、事件史や政治史などのめまぐるしく動く上層の出来事ではなく、容易には変わらない社会の「構造」を研究対象とするものである。宗教改革と言えば事件史としてもエポックメイキングな事件であるが、この時期の民衆を見ると、統治者の都合や神学的な論争とは関係の薄い状態で社会全体の「宗教改革」が進んでいったことがわかるのである(要するにタイトルの「真実」とはそういう意味合いであろう)。

 例えばルターが神学的にどういう主張をしたのかという問題はそれはそれで重要なのだが、本書ではほとんど取り上げられない。代わりに書かれるのは、民衆がルターの主張のうち、どういうものを受け止め、宗教改革が社会の中で進展していったかであり、民衆は神学論争よりも、主張された「行うべき行動」(聖職者の妻帯、贖宥状の否定、修道院制の否定など)を支持したという。
 また、それがどのようにして広がったかという点にも注目する。折しも活版印刷によってパンフレットを大量生産できるようになった時代にあって、文字を民衆に解放した(カトリックは文字を聖職者の間で独占しようとした)プロテスタントへの支持は広がりやすかったのだそうだ。

 また、宗教改革によって二宗派が共存することになった帝国自由都市で、そのことによって起きた種々の事件についても述べられている。宗教施設の利用や、異宗派間での結婚、暦の違いを巡っての様々な祝祭日日程の違いによる軋轢(カトリックがグレゴリオ暦を導入しても、プロテスタントは古いユリウス暦に固執していた)などなど。
 事件史・政治史的な記述は少ないが、高校世界史レベルの予備知識があれば読めるだろう。面白いので、おすすめの一冊である。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

検索フォーム
カテゴリ
リンク
アクセスカウンター
月別アーカイブ