カール大帝/佐藤彰一


 世界史リブレット人の一冊。フランク王で、西ローマ皇帝として戴冠したカール大帝の評伝。
 
 カール大帝は世界史Bの教科書にも必ず出てくる重要人物である。ランゴバルド、ザクセン、バイエルンなどを征服し、アヴァールを叩き、ビザンツと交戦し、戦争に明け暮れる一方で、カロリング・ルネサンスと呼ばれる文化的な成果を残した君主としても名高く、長らく不在となっていた西ローマ皇帝として戴冠した人物でもある。本書はむろんそのような側面にも触れるのだが、特徴的な点はカール時代のフランク王国をユーラシア史の中に位置づけようとしていることである(ちなみに著者は『グローバル・ヒストリーとは何か』の訳者)。

 アッバース朝の巨大都市バグダード、及びサーマッラーの建設がもたらした特需の影響がフランク王国にまで及んでいたこと、またそのルート(ロシア経由の交易路の存在やその物証などにも触れられている)などについて頁が割いてあり、さらにアッバース朝から通じる商業ルートをめぐって、カールはデーン人とも争っているという(なお、ハールーン・アッラシードがカールに贈った象は戦象としてデーン人との戦いで死んだそうである)。
 ハールーン・アッラシードとカールの外交交渉は二者関係ではなく、イェルサレムの大主教との三者関係で考えねばならないとの指摘もある(具体的な記述に欠けるのでもう少し詳しく知りたいところであるが)。
 この見方は、ヨーロッパがイスラーム勢力の勃興によって地中海北岸に押し込められたとするピレンヌ・テーゼとは真逆であり、著者はピレンヌ・テーゼに批判的なようだ。
 なお、他の部分についてはやや詰め込みの感がないではないが、それを差し置いても面白い本であった。
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鉄勒京二

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