安禄山/森部豊


 世界史リブレット人の一冊。安禄山を中心に、安史の乱を中国史よりも大きなユーラシア史の枠組みで書く。
 
 安禄山と言えばまず中国史上の人物であるという印象が強いが、本人は突厥とソグドの混血であって、配下にも契丹・突厥・ソグドその他の中央ユーラシアの諸部出身の武将が多く、単に中国史の枠組みだけで捕らえきれる人物ではない。本書は、その安禄山を前史としての突厥帝国史やソグド・ネットワーク、さらには西方のアッバース朝革命との関わりの中で把握する。逆に、玄宗や楊貴妃・楊国忠関連の記述は少ない(李林甫は少し多めに登場する)。
 森部氏本人の研究で明らかになった安史の乱前後のソグド系軍人の活動や、安禄山を「早すぎた征服王朝の創始者」と見る説、また唐朝側にも種々の人種的構成を持つ軍が参加していたことなど、この時代のユーラシア史の最近の研究を安禄山にからめて盛り込んであるようである。ただ、限られたページ数の中で様々な論点を盛り込んでいるため、安禄山の活動そのものを活劇調で活写できているわけではなく、そこに期待していると肩透かしを食らうかもしれない。

 個人的にはウイグルが唐に付くか安史勢力に付くかに関して、安史勢力の配下に突厥可汗の一族がいたことから、突厥系を利することになるのを避けて唐朝についたという分析が面白かった。
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鉄勒京二

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