近況と最近読んだ本など

 ヒストリエの8巻がやっと出たので購入。今回はエウメネスの軍才が垣間見えるエピソードになっています。デモステネスとフォーキオンが出てきて、そう言えば澤田先生の『アテネ 最期の輝き』を積んでいるので読まねばなあなどと。あと、出てくると思ってなかったアタイアスが出てきて、しかも割とあっさりやられてしまったので微妙な気分になりましたが、まあこれは個人的な思い入れの問題なのでありました。

 ところで、ここのところ白水社が大部の評伝の邦訳を相次いで刊行してますが、財布が悲鳴を上げております……しかし西洋史上の人物ばっかりで、どっかの出版社がMakers of the Muslim World叢書の邦訳を出してくれんかなあなどと思ったりなんだり。

 以下、最近読んだ本
 

■高橋慎一朗『北条時頼』
 人物叢書の最新刊。北条時頼ってどんな人だっけ、と言えば高校の時世界史選択だった私には、ここ最近日本史の本を読み始めるまでもはや記憶に無かったレベルの人物なわけですが(覚えてたのは義時・泰時・時宗あたりまで)、試しに読んでみるとこれがなかなか面白かったです。仏教者としても有名で、また水戸黄門の廻国伝説のようなものが時頼にもあったそうな。
 摂家将軍と北条氏の関係がゴタゴタして宮騒動が起きたりしているちょうどその頃の執権で、戦での華々しい活躍は無くとも、時頼の政治家としての活動はなかなか緊張感あるものだったようです。この本読んでる限りだと時頼はどっちかと言えば調整者タイプの人間だと思うんですが、宝治合戦の時など他にやる人がいないために果断な処置も取らざるを得ない時がしばしばあるように見受けられます。
 あとは泰時の親バカ・孫バカっぷりが(理由のあることとは言え)、時頼の親バカっぷりにつながっている気がして楽しいところでした。


■森幸夫『北条重時』
 上の『北条時頼』を読んで、政権のバックに控えていて安定感のある北条重時が気になったのでこの本も読んでみました。六波羅探題の執権探題から連署になったという、執権でこそないもののかなりの大物政治家です(なお息子の長時は時宗が成長するまでの「つなぎ」ではありますが6代目の執権)。鎌倉時代は京の朝廷と鎌倉の幕府との関係が持ちつ持たれつの一方でかなり緊張を孕んでいたりするわけですが、都にいて直接朝廷と折衝に当たったり、あるいは執権が没した時に後継者争いが起きないよう押さえにかかったことが推測されるなど、やはりいかにも重鎮然とした人物であったようで。
 一方で摂関家の九条道家(摂家将軍頼経の親父で頼嗣の爺さん)から漂う黒幕感もよく分かるのがなんとも。鎌倉時代というと武家の時代と思いがちですが、公家の存在感も相変わらずのようで、この辺を見ていると権門体制論の論旨もなんとなく納得できるのでありました。


■山田邦明『日本史のなかの戦国時代』
 日本史リブレットの新刊。南北朝ものばかり読んでいては話題についていけないことがあるので、戦国時代の入門書を手にとってみようというあまり純粋でない動機によって購入。
 私がこの本を読んだ理由はさておき、本書では精神史と社会史を別立てにしつつ、その精神史・社会史の変化がいかなる政治史の文脈の中で顕在化しているのかという書き方になっているので、前後の時代との繋がりを考え長いスパンで見ながらも非常に読みやすく分かりやすい本になっています。逆に言うと、戦国時代の戦史や、信長・秀吉・家康による天下統一の道程などは大して詳しくありません(もっとも、それを求めるのは見当はずれでしょうが)。
 室町幕府の守護在京体制が崩れて、守護と守護代(あるいは国人層)が権力闘争をはじめて勝ち抜いたのが戦国大名、ということになるようです。この辺、室町幕府のことをもう少し知りたいなあと思わせてくれる部分でした。
 また、戦国時代の農民訴訟についても少し頁が割いてあり、法制史に興味がある身としてはこの辺かなり面白かったです。後北条などは百姓の支配にかなり気を使っていたようです。


■有光友學『今川義元』
 我々にとって今川と言えば了俊ですが一般的には今川義元の模様。桶狭間で信長にあっさり負けたせいで噛ませ犬的なイメージの強い人ではありますが、ここのところ再評価が進んでいるようです(単に研究者の間だけでの話ではなく某マンガでは主人公になったとか……出世したもんだ)。
 花蔵の乱での後継者争いの勝ち抜きから桶狭間で陣没するまでの義元の経歴が一応なぞられているわけですが、彼の領国統治に関する部分についてかなりウェイトが大きいです。「自分の力量を以って国の法度を申し付け」、とは彼の言葉だそうですが、義元は領国の均一的法治にかなり心を砕いていた模様。秀吉・家康に至る近世への道の先駆けの一人として有光先生は義元を評価しているようです。
 また、最後の方に桶狭間の闘いについて、義元の目的は何だったのか、また義元が取った行動はそんなにアホだったのか、という点についての考察がありますが、これまでの諸説をまず並べた上で著者の見解を述べる形になっていて好感が持てます。
 個人的には太原雪斎の存在が気になりました。戦国時代はさっぱり知らないので大名クラスはともかくその側近になると名前も知らない人が多いのですが、義元と雪斎は名コンビだったんだろうなと思います。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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