近況と最近読んだ本など

 そろそろ本棚新調したいなあなどと思いつつ、本にお金が消えていく本末転倒な今日このごろであります。

 山川出版社のTwitterアカウントによれば、『モンゴル帝国の軍隊と戦争』という本が10月下旬に出るようです。ここのところ杉山先生以外のモンゴル関連の研究者の人が単著を出すことが増えてきて嬉しいところ。
 また、吉川弘文館の読みなおす日本史シリーズに『山名宗全と細川勝元』が収録されるそうで、今から楽しみです。本当に日本史は中世だけに限っても毎月のように新刊が出てうらやましいことで。
 世界史リブレット人シリーズの次回刊行はナポレオンとウィルソンの模様。ナポレオンは山ほど本が出ている気がしますが、どう切り込んでくれるのか期待しておきましょう。

 あと、『サマルカンド年代記』や『ヘウレーカ』などちょくちょく歴史物を出してくれるNHKラジオドラマ枠、青春アドベンチャーで、おなじみの小前亮さんの『エイレーネーの瞳―シンドバッド23世の冒険』がラジオドラマ化されて放送されるようです(ページはこちら)。これも要録音であります。

 以下、最近読んだ本
 


■トマス・D・コンラン『図説 戦国時代 武器・防具・戦術百科』
 原書房はA5ハードカバーの「武器・防具・戦術百科」シリーズを出していまして、一応古代と中世ヨーロッパも手元にあるので、とりあえずこれも手にとってみました。著者はアメリカの方ですが、ミシガン大と京大で日本文化について学んで今はアジア研究の准教授をされているそうで。本書も訳者がついておらず、著者自ら書いた日本語版のようです。
 タイトルは戦国時代と言いつつ、原題はWeapons and Fighting Techniques of the Samurai Warrior, 1200-1900だそうで、要するに武士の時代を扱っています。この邦題になったのは、まあ多分大人の事情というやつなのでしょう。南北朝や室町の戦争について詳しいのは嬉しい誤算(1336年の尊氏の入京時の布陣図が載ってたり)。フルカラーなので紙が厚く、また図版が大きくて多いので割と字数が少なく、本そのものの見た目の割にすぐ読めました。
 我々はなんとなく鉄砲が出てくるまでは中世の戦いとしていっしょくたにしてしまいがちですが、著者は槍の集団使用を戦術の重要な画期とみなし、その採用の成否が大名たちの興亡を決めた一つの要因であると見ているようです。さらに火器については、著者にヨーロッパ史の知識があることから、一国史観に陥りがちな日本人の日本史本とはやや違った視点を(主に比較においてではありますが)用いており、なかなかおもしろい部分です。


■藤田達生『秀吉と海賊大名 海から見た戦国終焉』
 だいぶ前に買って積んでいたものを消化。どういう内容かと思って読んでみれば、意外なことに伊予関連の記述が多く、河野氏の評価が高い本でした(河野氏と言えば蒙古襲来の時に活躍したり、細川頼之相手に伊予半国をなんとか確保した家)。戦国時代においては毛利氏と親戚筋で、村上水軍は一応河野氏の配下だった模様。
 彼らが結局のところどういう過程で天下人たちの作り上げた体制の中に組み込まれていくかを、時系列順に追っていくという形式をとっていますが、通説に対する批判が割と何の前置きもなく出てくるので素人にはいささか厳しい部分も(しかし河野氏は長宗我部に降伏していない、だとか、室町幕府は義昭追放で滅亡したのではなく「鞆幕府」として存続していた、だとかの話はなかなか面白いところで……この辺、詳しい人だと常識の範囲内なのでしょうか)。
 また、著者の藤田先生は惣無事令論争の否定派の筆頭で、その辺の話がこの本の主題である海賊衆に対する海賊禁止令と絡めて出てきたりします。


■吉川永青『義仲これにあり』
 源平ものの連作で一発目に義仲を出してくるというのは珍しい気がしますが、吉川さんの新刊(なお二作目は弁慶主役の『義経いづこにありや』で年内刊行の模様)。戦国幕末に比べれば少ないものの、源平ものは割とコンスタントに作品が出るのがありがたいところであります。
 巴の設定が特殊で中原兄弟とは全く関係ない他人になってたり、弁慶が(なんで義仲もので弁慶やねんと言うなかれ)かなり癖の強いキャラクターになってたり、義仲本人はまあ良くも悪くも主人公補正のかかった少年漫画風のよくあるパターンなんですが、この辺脇役があえて王道を外している感じがして好き嫌いが分かれるんではないかなあと。逆に行家、覚明や兼平は割と普通のキャラ付け。なお、個人的に期待はしていなかったものの武田信義は名前が出てきただけで登場シーンは無し(仕方ないと言えば仕方ない)。
 まあ視点が分散しておらず特に読みづらいこともなく、そこそこ楽しめたかなあとは思います。


■矢野隆『将門』
 矢野さんの新刊。将門関連の小説は吉川英治『平の将門』を読んだきりだったので、どう料理してあるのか気になって購入。将門と貞盛を愛憎半ばする関係として書いているのは面白いところですが、あとは、まあ、細かい工夫はありますが全体を通して見ると割と普通かなと。よくも悪くもとんがったところの少ない小説になっています。秀郷の出番がやや少ない気はしますが、比較的キャラも立っていて読みやすいので頭使わずに読む分には良い本。源護や藤原忠平は背景になってしまっていて登場人物も割と整理されている印象。
 野暮ながら史実との違い(ストーリー上の展開には是正しても何ら影響ない)を挙げるとすれば、この時代の日本に槍が無いのに出てきてしまっている点。鉾や長巻はそれまでにも存在していましたが、日本での槍の普及は南北朝時代頃からなのでありました。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
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