チンギス・ハーン世界帝国の謎/川崎淳之介


 初学者向け:◎
 副題は「草原と熱沙に賭けた二人の王者の野暮と夢」。
 「二人の王者」の一人はタイトルにある通りチンギス・カン。もう一人はティムールである。
 チンギス・カンとモンゴル帝国を解説した歴史書は少なくないのだが、ティムールを中心に扱っているものとなると片手で数えるほどしかない。本書は、後半の章をティムールに割いており、もちろん、チンギス・カンに興味がある人にも勧められるが、初学者がティムールを知るためには最適である。
 著者は演劇が専門で、マーロウの「タムバレイン大王」からティムールに興味を持ち(ちなみにヨーロッパではティムールはチンギス・カンよりも有名)、そこからティムールの生涯の目標となったチンギス・カンについても調べるようになったそうである。彼の専門のためか、文章は読みやすい。

 とは言っても、何分10年以上前の本なので問題もある。例えば、引かれている大概の文言は「秘史」によるもので、「集史」の参照が無いこと、さらにドーソンの「モンゴル帝国史」を何の警戒もなく引用していること(ドーソンの帝国史の問題については杉山正明先生が指摘している)等である。
 まあ、当時の日本の限界と言ってしまえばそれまでだし、分かりよい入門書ではあるので、大まかなことを頭に入れた後、最近刊行された本なども読んで間違いを正せば問題はなかろう。

章立て

プロローグ 法をつくり、美をつくった二人の英雄

第1部 草原の王者チンギス・ハーンの謎
 第1章 力が支配するモンゴルの無法地帯
 第2章 世界最強のモンゴル帝国の誕生
 第3章 世界制覇の野望と戦略
 第4章 チンギス・ハーンをめぐる美女たち
 第5章 モンゴル軍の戦術と残虐行為

第2部 熱沙の英雄チムールの謎
 第6章 モンゴルの兜をかぶった英雄チムール
 第7章 チムールの優秀な戦略・戦術能力
 第8章 英雄が燃やした「美への情熱」の謎

エピローグ 現代に生きている「英雄の遺産」
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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