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納得しなかった男/山内昌之


 エンヴェル・パシャの評伝。
 エンヴェル・パシャと言えばオスマン帝国末期に青年トルコ革命を指導し、後にタラート、ジェマルとともに三頭政治を敷いて帝国の実権を握った男である。だが、オスマン帝国、そしてトルコの歴史の主役はその後アタテュルクことムスタファ・ケマルへ移り、エンヴェルらがその後、どうしていたかはあまり一般的には関心を持たれていないのではないだろうか。本書は第一次世界大戦に破れ、エンヴェルらが国外へ逃れるところから話が始まる。
 ヴェルサイユ体制からはじき出された独ソの間に立ち、ソビエトから援助を引き出しつつイスラーム世界の開放を画策していたエンヴェルは、ケマルの権力確立と独ソの国際社会への復帰によってその立場を危うくし、立場を変えて中央アジアの反ソ活動バスマチに参加してあえなく赤軍の銃弾に倒れる。このわずか4年ほどの彼の活動がA5版600頁の大著にみっちりとつめ込まれている。

 社会主義、ナショナリズム、そしてイスラームの関係はこれ以前の山内氏の著書『スルタンガリエフの夢』でも書かれていたところであるが、本書でもその問題関心は継続しているようである(エンヴェルがソビエト的な綱領を採用した党を組織していたというのは、意外ではないだろうか?)。
 細かく読んでいくとエンヴェルへの思い入れが強すぎる点に注意が必要であり、書簡などの一次史料と、既存の伝記などの継ぎ接ぎ感の強い部分があるのも気にはなるところである。さはさりながら、エンヴェルの評伝として、またバスマチ運動を扱う本として、数少ない日本語で読めるものであることに変わりはなく、貴重であると言えよう。
 エンヴェルのみならず、ドゥルーズ教徒アラブ人でオスマン主義者のシャキーブ・アルスラーンや、バスマチ運動の指導者ゼキ・ヴェリディ・トガンなど、比較的マイナーな人名がこれでもかと出てくるので、巻末の主要人物略伝集は大変ありがたい。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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