神軍 緑軍 赤軍/山内昌之


 副題「イスラーム・ナショナリズム・社会主義」。帯には「民族問題のアポリアに迫る 紛争の本質をソ連崩壊以前に逸早く指摘したカルチュラル・スタディーズの先駆的論考」とある。
 
 以前紹介した『スルタンガリエフの夢』や『納得しなかった男』など、山内氏の主要な研究対象に副題の3つの要素が関わっているのは周知の事実で、本書は主にロシア革命時のムスリム達を対象とした論考を集めたものである。扱われる範囲はカフカス、中央アジア、アナトリアと幅広い。
 本書は序と1~4部からなる。どれもやや各論寄りであるが、個人的に面白かったのは第2部「アナトリアのボリシェヴィキ」だろうか。ケマルが主導権を握るまでに各地に現れた反ギリシア軍抵抗武装集団の性格(匪賊的出自を持つ)や、またトルコ革命に対するソビエト側からの評価、ケマルの共産党及び緑軍への対応などが興味深い。ケマルの公認共産党は、地下共産党の勢力を弱体化するのに効果的だったという。
 他の論考も、革命期にあって東側陣営に接近したり身を投じたりしたムスリム達が主な対象となっていることは共通している。イスラームと共産主義の一見親和的に見える性格、そして後に顕在化する矛盾や、共産主義を民族運動の中に取り入れる理論(これは『スルタンガリエフの夢』に詳しい)などが扱われている。白軍と赤軍の間でソヴィエトに付いた人々(この二つの勢力の間で局外中立を保つのは不可能だっただろう)や、あえてソヴィエトを利用しようとする人々などが何を考え、どう行動していたのか、革命と反革命という線引だけでは割り切ることはできないのだろう。
 『スルタンガリエフの夢』や『納得しなかった男』とは違って論考の対象がバラけているので必ずしもまとまりがあるとは言い難いが、あの二冊を読んだ上で、なお興味があれば読んでみてもいいのではないか。
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鉄勒京二

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