近況と最近読んだ本など

 勉学を、したい時分に、暇は無し。
 どうも、ご無沙汰しております。いろいろしでかしてガチ凹みしたり、帰ってくるなりぶっ倒れて寝たりであまり時間が取れず厚めの本も読めてないんですが、しばらくこの状況が続きそうです。ここのところ『中東国際関係史研究』や『モンゴル覇権下の高麗』、『モンゴル帝国の戦争と軍隊』そしてついに完結した動乱の東国史最終配本『鎌倉府と室町幕府』などなどA5版500頁超えの大著を二冊含む新刊ラッシュなので時間が欲しいのですが。

 ところで、最近網野善彦先生の本を読んでいて、こういう民俗学的な手法を取り入れた下からの歴史研究って西アジア・北アフリカ史で現状どうなってたっけ、なんてことを取り留めもなく考えています。聖者を拝むことに関しては私市正年先生の研究がありますし、『イスラム社会のヤクザ』もこういうアプローチの本でしょう。文学から読み取るのは前嶋信次先生が得意にしていたと記憶しています……こうやって考えると色々あるんですが、史料の性格からかあるいは絶対量からか、仮に網野先生と阿部謹也先生の対談なんかに誰かこの辺の研究者を参加させて、話が噛み合うのかなあなんて思ったり思わなんだり。

 さて、今更ながら12月の新刊情報ですが、山川出版社の世界史リブレット人は『イブン・ジュバイルとイブン・バットゥータ』、『ピョートル大帝』の模様。家島彦一先生はイブン・バットゥータについては割と色々書いている気がしますが、イブン・ジュバイルについて何を書かれるのか楽しみです。
 同じく山川の「イスラームを知る」は、(『文明の邂逅』が立ち消えになったのか後回しになったのか、どっちかはわかりませんが)予定を変更して、2期のラインナップから繰り上げで三浦徹先生の『イスラームを学ぶ 史資料と検索法』が出版される模様。我々在野の人間には色々ありがたい本になりそうで期待しています。それにしても『文明の邂逅』ははたしてどうなったのか……。
 刀水書房の『十字軍の歴史』は11月予定のはずだったんですが、未だに書店でもみかけませんし、Amazonでも注文できる状態にありません。公式ページではやっと表紙が出ていますが、さて、いつになることか。

 小説では吉川永青さんの『義経いづこにありや』が18日刊行、そして塩野七生女史が『皇帝フリードリッヒ2世の生涯』を出すとか……。塩野女史の本はまあ、不安の方が大きいですがとりあえず買うだけ買っておこうと思います。

 てなわけで、以下、最近読んだ本。

■鈴木恵美『エジプト革命――軍とムスリム同胞団、そして若者たち』
 10月未に出ていた中公新書。割と出てすぐ読んだんですが、なかなか感想を書く時間がないままこんなに経ってしまいました。軍、ムスリム同胞団、青年勢力を三本の軸としつつ記述が進んでいきます。エジプトの政治においてこれまで軍が果たしてきた特異な役割と、それが今回の「革命」の成り行きにどう影響しているのか、ということがよくわかります。サッカーチームのサポーターの件は、不謹慎ながら面白いと思ったり。
 卒業旅行にエジプトに行きそこねて早一年が経とうとしていますが、さて、次の機会はいつになることか……。「砂塵と煙火の先に民主化の光はあるか」という帯の言葉が重いです。


■小田中直樹『歴史学ってなんだ?』
 PHP新書から出ている一般向けの歴史学入門。まあ、巷では色々と言われているようでありますが、それほど変なことを言っているようには思いません。ただ言葉足らずのところもあるので史学の徒はこれ読んだ後に遅塚先生の『史学概論』も読みましょう、といったところ。初学者向けにはいいのではないでしょうか。ブックガイドとしてもおすすめです。


■西研、竹田青嗣、本郷和人『歴史と哲学の対話』
 ポストモダンの歴史学批判でも扱っているのかと思って手にとったんですが、どうやらそういうわけではなかったらしく。本郷和人先生はご存知中世日本史の方ですが、その本郷先生が西先生と竹田先生に現象学を中心にして歴史と哲学について話を聞く、という体裁になっています。
 本郷先生自身、哲学の予備知識があまりないようですから、本郷先生に対する西先生と竹田先生の言葉遣いが平易で、我々も読んでて分かりやすい本となっています。無記名の発言(編集者の方でしょうか?)のツッコミや質問も鋭く、なかなか読ませる本です。


■伊藤潤『黒南風の海』
 以前紹介した『城を噛ませた男』の伊藤潤さんの作品。文禄・慶長の役を扱っていますが、作者も出版社もよくもまあこのテーマで出そうと思ったものです。私は普段(出す本はともかく)出版社としてのPHPのことは大して評価していませんが、この本を出したことに関しては賛辞を贈りたいところです。国際環境の中での戦争という点で異文化間の相克と対話とが好きな人には興味深いテーマのはずなのですが、昨今の現実での政治問題のごちゃごちゃもあり蒙古襲来ほど気軽に扱える題材ではないのであります。
 サブタイトルこそ加藤清正ですが、半分くらいはもっと地位の低い人達の話であったり。ちなみにあちらで大人気の李舜臣は(動向こそ地の文で説明されますが)ほとんど背景と化しています。
 文禄・慶長の役については日本史リブレットで一冊出てるので、あれもそのうち読みたいなあと。


■安部龍太郎『バサラ将軍』
 『道誉と正成』で、南北朝ものはいまひとつかなあと思っていた作者の本ですが、ところがどっこいこちらは大変面白い。個人的に気に入ったのは「狼藉なり」で、太平記バサラトリオ(佐々木導誉、高師直、土岐頼遠)の一角頼遠が院の車に矢を射掛けた件に取材した話ですが、師直の頼遠に対する惚れっぷりとか、頼遠の意図の解釈とか、師直のいかにもバサラらしい芝居がかった演出とか、なかなかツボであります。
 なお表題作の「バサラ将軍」は義満と三条局と後円融帝の話(義満が夜這いをしただのしてないだののアレ)。義満は主人公として書くには変なクセの強い人物だと思いますが、こういう料理の仕方もあるかと思わせてくれる作品です。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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