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歴史創作短歌まとめ

 歴史上の人物をテーマにして作っていた短歌の数が地味にたまってきたので、一度ここらでまとめておきます。
 なお、それぞれに付いている短い解説文は物語性を優先させて史実と異なる伝承、あるいは俗説などを取り入れている場合がありますので注意。書名はもう少し詳しく知りたい方向け。
 
■2月12日

民草がために捨て去る後にさえ 帰れば見ゆる君の面影
 サラディン(1137/8-1193)
 アイユーブ朝の初代スルタン。もとシリアのザンギー朝のアミールだったが、成り行きからエジプトの支配を委ねられる。旧主ヌールッディーンと袂を分かつこととなっても、彼を矛を交えることをよしとせず、ヌールッディーン死後、シリアの首邑ダマスカス入城時はその後継者として振る舞うことを心がけていたという。
佐藤次高『イスラームの「英雄」サラディン』

はらからの留まるうちは倒れ得じ 忘れざらまし 吾は王なり
 インド王ポロス(紀元前4世紀頃)
 アレクサンドロス大王と戦ったインドの王。ヒュダスペス河畔でアレクサンドロスと戦い、自ら戦象を駆り孤軍奮闘するが最終的に捕えられる。アレクサンドロスに望みを聞かれ、「ただ王としての扱いを」と応えた。
アリアノス『アレクサンドロス大王東征記』

■6月18日

楠木のそびえる高さはなけれども 金剛となれ赤松の山
 赤松円心(1277-1350)
 鎌倉時代末期~南北朝時代にかけての播磨の武将。はじめ、足利尊氏、楠木正成らとともに倒幕に尽力。後醍醐帝が建武の新政を開始すると極端に冷遇され、播磨へと帰る。足利尊氏が新政に不満を持つ武士たちを糾合しはじめるとこれに呼応。尊氏西走の際、追いすがる新田義貞勢6万をわずか2千の寡兵を持って50日間足止めする。この白旗城の戦いは義貞の弟脇屋義助に、楠木正成の金剛山での戦いを思い起こさせた。尊氏が九州で体制を整え東上してくるとこれに加わり、同じ護良親王派でありながら袂を分かつこととなっていた正成と戦い、湊川にて正成は破れ自害する。
高坂好『赤松円心・満祐』

■6月20日

砂の風 獅子咆哮は貫いて バフルの仔らよ蒼狼を狩れ
 バイバルス(1223?-1277)
 マムルーク朝の第五代スルタン。もとはキプチャク草原の遊牧民だったが、故郷がモンゴルに攻められ奴隷として売り飛ばされる。売られた先でアイユーブ朝スルタン、サーリフの奴隷軍人(マムルーク)となる。彼らはバフル(ナイル川)の兵舎で生活していたためバハリ=マムルークと呼ばれた。ルイ9世の十字軍を退け頭角を現し、アイン・ジャールートの戦いでは仇敵モンゴルを破った。
牟田口義郎『物語 中東の歴史』

花の街 海越え聞かんや遠き声 剣は置きて友にまみえん
 フリードリヒ2世(1194-1250)
 シチリア王にして神聖ローマ皇帝。手紙を通じて友人と言えるほどまでつきあいを深めていたアイユーブ朝のスルタン、アル=カーミルと交渉し無血でイェルサレムを譲り受けた。「皇帝は花の下にて死ぬだろう」との占星術師の予言の通り、フィオレンティーノにて死去。
吉越英之『ルネサンスを先駆けた皇帝』

■6月23日

遠き国偲ぶよすがは椰子木陰 知る人過ぐる今我ひとり
 アブドゥルラフマーン1世(731-788)
 後ウマイヤ朝初代アミール。ウマイヤ家の一員であったが、アッバース革命の煽りを受け首都ダマスカスから単身北アフリカへ脱出、母方の縁を頼りにベルベル人たちを見方につけ、ジブラルタルを押し渡り後ウマイヤ朝を建国した。もとは闊達な性格だったというが、戦乱の中でしだいに心を閉ざし、晩年は人を信用することがなくなった。庭にダマスカスの椰子を立て故郷を懐かしんでいたという。
マリア・ロサ・メノカル『寛容の文化』

■6月27日

あしひきのバルカンの暗き夜は更けて 眠る覇王の喉をぞ喰らえ
 ヴラド3世(1431-1476)
 ワラキア公ヴラド・ツェペシュ・ドラクル。オスマン帝国の侵略を退けた英雄であるとともに、その残虐行為(多くはハンガリー王マーチャーシュのプロパガンダとも言われる)から吸血鬼ドラキュラのモデルともなった。征服王メフメト2世がワラキアに15万の大軍を以って侵攻してきた際、10分の1の寡兵で夜襲を敢行、これを破る。
清水正晴『《ドラキュラ公》ヴラド・ツェペシュ』

■9月20日

紅き旗 我が友の血に染まれども 征こう欧亜を ただ一人とて
 スレイマン1世(1494-1566)
 オスマン帝国の最盛期を築き上げたスルタン。大帝、あるいは立法者(カーヌーニー)と呼ばれる。自ら欧亜を股にかけ、大征服を展開したが、その治世には多くの功臣の粛清も伴った。幼少期からの友人で大宰相となったイブラヒムもその一人である。
アンドレ・クロー『スレイマン大帝とその時代』

■10月19日

衣手の血潮に濡れてたなびくを 見ずに幾年ホムスの宿に
 ハリード・ブン=アル=ワリード(592-642)
 正統カリフ時代の伝説的な将軍。リッダ戦争や対ビザンツ戦で活躍し、あまつさえ9000の軍勢を率いてのシリア砂漠横断という前人未到の行軍を行いダマスカスを陥落させる。だが、その戦功と独断気味の性格が災いし、カリフ、ウマルに警戒され、将軍職を解かれて失意の中ホムスで晩年を暮らした。
牟田口義郎『物語 中東の歴史』
F・ガブリエリ『マホメットとアラブの大征服』

■10月27日

梓弓 引き具す山の獅子の仔は 砂原を越えよ 野心の果てに
 アサドゥッディーン・シールクーフ(?-1169)
 ザンギー朝のアミール。サラディンの叔父にあたり、その名は「山の獅子」を意味する。アンティオキア公レイモンを自ら討ち取るなど対十字軍戦で名を馳せた名将であり、三度に渡るエジプト遠征を指揮した。三度目のエジプト遠征が成功した直後、原因不明の腹痛を訴え頓死。その事業はサラディンに引き継がれた。
アミン・マアルーフ『アラブが見た十字軍』

■11月18日

道を生き道に生かされたどり着く 地平の先のあの日見た夢
 イブン=バットゥータ(1304-1368)
 14世紀の旅行家(マルコ・ポーロとほぼ同時代)。『大旅行記』(あるいは『三大陸周遊記』)を残す。その旅程はイラク、黒海沿岸、ロシア、モロッコ、中央アジア、インド、アフガニスタン、スリランカ、東南アジアなど現代の50カ国に及ぶ(中国には行っていないであろうという説が強い)。
家島彦一『イブン・バットゥータの世界大旅行』
イブン・バットゥータ『大旅行記』

■11月19日

ひむかしに蒼き孤影を追い求め 往きつく果ては雪に沈んで
 ティムール(1336-1405)
 ティムール朝の初代君主。名の意味は「鉄」。没落したモンゴル貴族の家に生まれたが、徒手空拳から中央アジアを制覇し、ロシア、インド、イランなどへ遠征を繰り返す。オスマン帝国のスルタンで軍事的天才でもあった雷帝バヤズィトを破った後、モンゴル帝国再興を目指し東方遠征を開始したところで死去。彼が死去したオトラルは、奇しくもチンギス・カン征西の切っ掛けとなった街でもあった。
羽田明『西域』
加藤九祚『アイハヌム2008』

■11月23日

赤錆びた夢に雪舞う草原に 糸切り駆けよ傀儡の狼
 オルジェイ・テムル・ハーン(1379-1412)
 ティムールが立てていたチンギス裔(ティムールは自らはカンを名乗らず、傀儡のカンを立てていた)。ベンヤリシとも呼ばれる。ティムールが冬のオトラルで死去した後、独力でモンゴル高原まで辿り着き、北元皇帝として即位することになる。
岡田英弘・神田信夫・松村潤『紫禁城の栄光』

■11月30日

赤心の詰まりし鼓腹に下天を喰らう 打てど響くは陣の銅鑼のみ
 安禄山(705-757)
 唐の節度使。かつて玄宗からその腹に何が詰まっているのかと尋ねられ「ただ赤心(まごころ)のみ」と応えたという。しかし、鼓腹撃壌とはいかず、権勢を恣にしていた楊一族の圧力に耐え切れず挙兵、中原を戦乱の渦に叩き込んだ。
森部豊『安禄山』


■12月7日

遠き地に焦がれし人を見送りて 我に残れるただ詩と酒と
 ウマル・ブン=アリー・ブン=ハラフ・ハイヤーム(11-12世紀頃)
 ペルシアの詩人。こよなく酒を愛した。無常感漂う四行詩ルバイヤートで知られが、この詩集はフィッツジェラルドの英訳によりアメリカで一大ブームが起こったこともある。なお、近年の研究でジャラーリー暦制定などを行った科学者ウマル・ハイヤーミーとは別人であろうとされている。
オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』(岩波文庫版の解説がおすすめ)

熱き日の果てなき未練に詠む歌よ 谷底の雲にせめて伝われ
 ジャミール・ブン=アブドゥッラー(?-701頃)
 ウマイヤ朝時代の詩人。詩作で有名なバヌー=ウズラの出身。同族の女性ブサイナに対する悲恋で知られる。彼女が別の男性と結婚した後もその思いを歌い続け、バヌー=ウズラを追われた。彼の詩風は後世のウズラ派の模範となった。

野心の火 種さえ残らば絶やすまじ 遥か西縁馬蹄の限り
 バトゥ(1207-1256)
 モンゴル帝国ジョチウルス政権のカン。後継者争いから外された父の後を継ぎ、切り取り次第とされた西方領土の拡大に挑む。冷酷であったが、名君でもあり、サイン・カン(賢明なる王)と讃えられた。
杉山正明『モンゴル帝国の興亡』
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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