イスラームの創始と展開/佐藤次高[編]


 山川出版社の「宗教の世界史」シリーズの1冊。宗教としてのイスラームの歴史の概説書。
 
 従来、「イスラーム世界」の歴史を書く時、宗教と社会を分離させて記述することが難しかったこともあり、宗教史と政治史・社会史が一体となって記述されてきた。そのため、宗教史で一本立てして記述してある本書でも、そう新しいことが書いてあるわけではないだろうと思っていたのが正直なところである。ところがふとした切っ掛けで読んでみるとこれがなかなかおもしろい。
 本文は230頁ほどであるが、それぞれの章のテーマごとに専門の学者が執筆を担当している。特に五章はスーフィズムの専門家東長靖氏の担当で、スーフィズムについて平易にまとまっている。日本人の著作で、スーフィズムについて体系的かつ一般向けに書いたものは数がほとんどないので大変ありがたい。
 ところどころ、従来の概説の記述を改める部分もあり(個人的に気になったのはブワイフ朝の宗派の扱い。これまで佐藤氏は「ブワイフ朝はザイド派政権」としていたが、本書の佐藤先生の稿を読むと、どうやらそれも古い説であるらしい)、最新に近い知見を得られる。
 巻末の付録も充実しており(特に祭事暦)、この部分の有用性も高く、一冊手元においておくと便利である。
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鉄勒京二

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