新年のご挨拶と最近読んだ本など
明けましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいします。
今年は午年ですが、馬と言えばジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』でも触れられている通り、世界史に非常に大きな影響を与えた動物です。馬の機動力を活かして大帝国を築いた遊牧民たち、またその輸送力を活かして商業活動を展開した人々などが行き交う内陸アジアの歴史研究は、ここのところ目覚ましいまでの発展が見られますが、午年にあやかって是非ともこの勢いを更に増して欲しいところ。
また、2014年は第一次世界大戦開戦から100年に当たります。日本は二次大戦のことばかりで一次大戦についての関心があまり高くないように思いますが、総力戦の本格的な幕開けであった一次大戦について、今日の戦争と平和を考える上でも関心が高まってほしいものです。
人文書院から予てより「レクチャー第一次世界大戦を考える」という叢書が出ていてこの機会に充実することを望みたいのですが、さてはて。
以下、最近読んだ本。
■諏訪勝則『黒田官兵衛』
今年の大河ドラマが黒田官兵衛ということもあって、官兵衛本が出版ラッシュになっていますが、その中の一冊。大河に便乗してとは言え、そこはそれ中公新書らしい堅実な一冊となっています。ただ、同じく最近の中公新書の『足利義満』なんかに比べるとやや易しめの印象。
案外細かく見ていくとはっきりしていることは少ないようで(史料の残り方はいい方のようではありますが)、戦国時代の人物にはありがちなことながら、有名な諸々の逸話も裏の取れないものが多い模様。官兵衛はどっちかと言うと軍師よりも前線司令官だろう、という話はよくよく頷けるところであります。
■三浦徹[編]『イスラームを学ぶ 史資料と検索法』
リブレット「イスラームを知る」シリーズ第一期の最後を飾る第3巻。予定を変更してやっと出ましたが、『文明の邂逅』はどうなったのか……。
サブタイトルを読む限りだと内容はイスラーム関連の事柄を調べるにあたっての方法やツールの紹介といったところになりそうなものですが、一章は日本とイスラームの出会いとイスラーム研究史的な内容だったり、コラムにイブン・アン=ナディームやジャーヒズの話が出ていたり、さらには図書館史の話が展開されてたりと、脇道もなかなか面白いです。
アマチュアが研究手法を知るために手元においておくと便利なのはもちろん、読み物としても優秀ではないかと。
この本読んで『マイヤーファリキーンのアーミドの歴史』の校訂版に英訳が付されていることを知ったんですが、Amazonやabebooksで探しても見当たらず……。
■吉川永青『義経いづこにありや』
『義仲これにあり』に続く吉川源平の二作目。タイトルは義経ですが主人公は弁慶。
以前『我が土は何を育む』を読んだ時にも思ったんですが、これまでにも散々主人公として扱われているような人物についてはヒネるのが吉川さんの一つのやり方なんでしょうか。ネタバレは避けますが、弁慶筆頭に義経一行及び頼朝が非常にエグい集団に。ここまでヒネるとなると、義経北行伝説をどうするのかが気になりつつ読み進めてましたが、まあ落とし所としてはこれでいいんじゃないかなと。
一方、佐竹の制圧や伊勢の反乱の件をうまく組み替えてあるのはなかなかおもしろいところです。
前作の義仲以上に好き嫌いが分かれそうですが、私は楽しめました。
今年は午年ですが、馬と言えばジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』でも触れられている通り、世界史に非常に大きな影響を与えた動物です。馬の機動力を活かして大帝国を築いた遊牧民たち、またその輸送力を活かして商業活動を展開した人々などが行き交う内陸アジアの歴史研究は、ここのところ目覚ましいまでの発展が見られますが、午年にあやかって是非ともこの勢いを更に増して欲しいところ。
また、2014年は第一次世界大戦開戦から100年に当たります。日本は二次大戦のことばかりで一次大戦についての関心があまり高くないように思いますが、総力戦の本格的な幕開けであった一次大戦について、今日の戦争と平和を考える上でも関心が高まってほしいものです。
人文書院から予てより「レクチャー第一次世界大戦を考える」という叢書が出ていてこの機会に充実することを望みたいのですが、さてはて。
以下、最近読んだ本。
■諏訪勝則『黒田官兵衛』
今年の大河ドラマが黒田官兵衛ということもあって、官兵衛本が出版ラッシュになっていますが、その中の一冊。大河に便乗してとは言え、そこはそれ中公新書らしい堅実な一冊となっています。ただ、同じく最近の中公新書の『足利義満』なんかに比べるとやや易しめの印象。
案外細かく見ていくとはっきりしていることは少ないようで(史料の残り方はいい方のようではありますが)、戦国時代の人物にはありがちなことながら、有名な諸々の逸話も裏の取れないものが多い模様。官兵衛はどっちかと言うと軍師よりも前線司令官だろう、という話はよくよく頷けるところであります。
■三浦徹[編]『イスラームを学ぶ 史資料と検索法』
リブレット「イスラームを知る」シリーズ第一期の最後を飾る第3巻。予定を変更してやっと出ましたが、『文明の邂逅』はどうなったのか……。
サブタイトルを読む限りだと内容はイスラーム関連の事柄を調べるにあたっての方法やツールの紹介といったところになりそうなものですが、一章は日本とイスラームの出会いとイスラーム研究史的な内容だったり、コラムにイブン・アン=ナディームやジャーヒズの話が出ていたり、さらには図書館史の話が展開されてたりと、脇道もなかなか面白いです。
アマチュアが研究手法を知るために手元においておくと便利なのはもちろん、読み物としても優秀ではないかと。
この本読んで『マイヤーファリキーンのアーミドの歴史』の校訂版に英訳が付されていることを知ったんですが、Amazonやabebooksで探しても見当たらず……。
■吉川永青『義経いづこにありや』
『義仲これにあり』に続く吉川源平の二作目。タイトルは義経ですが主人公は弁慶。
以前『我が土は何を育む』を読んだ時にも思ったんですが、これまでにも散々主人公として扱われているような人物についてはヒネるのが吉川さんの一つのやり方なんでしょうか。ネタバレは避けますが、弁慶筆頭に義経一行及び頼朝が非常にエグい集団に。ここまでヒネるとなると、義経北行伝説をどうするのかが気になりつつ読み進めてましたが、まあ落とし所としてはこれでいいんじゃないかなと。
一方、佐竹の制圧や伊勢の反乱の件をうまく組み替えてあるのはなかなかおもしろいところです。
前作の義仲以上に好き嫌いが分かれそうですが、私は楽しめました。