イスラームの拡大と変容/小杉泰[編]


 山川出版社の「宗教の世界史」シリーズの1冊。「イスラームの創始と展開」の続刊にあたる。
 
 前巻が面白かったので、本書も手にとってみた。
 この巻の内容は、「周辺」とされる地域(アフリカ・中央アジア・南アジア・東南アジア)でのイスラームの拡大と展開と、主に近世以降のイスラームの変容とに二分される。
 前者については1章あたり割かれているのがおよそ30~40頁前後ということもあり、少々駆け足になっている感が否めない。他の本(例えば『4億の少数派』や『マイノリティと国民国家』、『マルコムX』など)と一緒に読むといいだろう。
 後者は、近現代のスーフィー教団について前巻から引き続き東長氏が書いている他は、編者の小杉泰氏の稿となっている。ワッハーブ運動やアフガーニーなど、重要性は高いがいまひとつ手堅い概説などで解説を見ない事項について解説してあり、大変ありがたい。また、この部分でも世界各地への目配りがあり、ナイジェリアのウスマン・ダン・フィデオ、南アジアのシャー・ワリーウッラーなどの名前も挙がっている。『固き絆』や『マナール』が中東のみならず、世界各地に流布し、影響を与えていたという事実に驚いた。

 全体を通じて、政治史からはやや離れ(イスラームの性格上、政治史とその他は不可分ではないのであるが)、主に思想史と社会史のはざまを行きつ戻りつしつつ記述が行われているような印象を受ける。イスラームの歴史に興味のある向きには、政治史偏重の歴史観から離れるために前巻と合わせ、この本が必読書となろう。
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鉄勒京二

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