スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ティムール帝国/川口琢司


 講談社現代選書メチエの新刊。ティムール帝国についての一般書。
 
 ティムール関係の本、日本語で読めるものでもこれまでなかったわけではない。ただ、川崎淳之助氏のものは読みやすいので最初の一冊にはいいが、彼は文学畑の人でいま一歩踏み込もうと思うと物足りない部分があるし、アイハヌム2008は逆に詳しすぎて初心者では歯が立たない。そんな状況の下で、本書は『ティムール帝国支配層の研究』の著者である川口氏が一般向けに書き下ろした一冊である。
 ティムールと言えば軍事の天才というイメージがまず思い浮かぶが、そのあたりのことは通り一遍である(詳しく知りたければ世界の戦争シリーズの3巻『イスラムの戦争』がおすすめ)。
 本文はおよそ260頁ほどで、全八章からなる。前史からティムールの死までが1~3章で書かれ、以降は各論となる。

 第3章でティムールのインド遠征について扱っているのだが、彼のインド遠征にガズナ朝のマフムードの影響が見え隠れするという。ティムールが歴史を好んでおりチンギス・カンを意識していたのは周知の事実だが、他にもアレクサンドロスやマフムードなど、何人かの偉大な征服者に影響を受けていたらしい。

 各論部分で面白かったのは、ウルグ・ベクのティムールの後継者としての性格を強調してある第7章である。
 単にウルグ・ベクがサマルカンドに本拠を構えた(彼の父シャー・ルフはヘラートにいた)という点だけではない。彼の対外干渉が自発的なもので(父の許可はとっている)、チンギス家の王族を支援して各ウルスに支配権を及ぼそうとするティムールの政策を踏襲したものであること、ウルグ・ベクが自らのギュレゲンとしての性格を強く意識していたことなど、いくつかの点でティムールとの連続性が明らかであるようだ。
 その他各論で扱われているのは帝国揺籃の地マー・ワラー・アンナフルについて、帝国とその首都圏について、ティムールの死と後継者争い、ティムールに対するイメージの変遷について、など。

 なお、『ティムール帝国』というタイトルではあるが、ティムールの没後についてはウルグ・ベクあたりまでで記述の大部分が終わっており、それ以降については別の本を当たった方がいい。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

検索フォーム
カテゴリ
リンク
アクセスカウンター
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。