まんがで読破『コーラン』の話


 遅まきながら、前から気になっていたまんがで読破シリーズの『コーラン』を買ってきました。コーラン(クルアーン)という書物は聖書と異なり基本的に一貫したストーリー性がなく、通読しても大して物語的な楽しみ方ができるものではありません。というわけで、このマンガもコーランそのものをマンガ化したわけではありません。
 さりながらなかなかよく取材してあって、まずコーラン内に散在する物語性のある記述をピックアップした部分ではイブラーヒーム(アブラハム)、イーサー(イエス)などの諸預言者のイスラーム的な理解を示しています。このあたりはコーランから記述を拾ってきただけでは書けないでしょう。
 ムハンマドの生涯の部分は単に伝記的な描写ではなく、おそらく後藤先生の著作から当時のアラブ社会のあり方を学んで、背景として書き入れています。初期イスラーム共同体の歴史的な展開に関しても、ヘタな歴史学習マンガよりもよく描き込まれているように思います。
 その他、六信五行の解説部分でアシュアリーの運命獲得論を紹介したり、要所要所でコーランの引用が置かれているなど、どうも企画者・作者陣の中に相当造詣の深い人がいる模様。

 このマンガがイスラームに甘すぎるという批判もあるようですが、タイトルがコーランである以上、いたしかたないところではあるでしょう。初学者向けにはいいと思いますし、それなりに知識のある人でも何かしら発見があると思います。
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鉄勒京二

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