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田中比呂志『袁世凱』


 世界史リブレット人の一冊。副題は「統合と改革への見果てぬ夢を追い求めて」。
 
 袁世凱は著者の言うとおり、足跡の大きさと比して近代中国史においてあまり評判のいい人物であるとは言いがたい。とは言え、彼なしで近代中国史を語る事もできない。つい半年ほど前に岡本隆司氏の『袁世凱』が出版されたばかりだが、本書も岡本書と同様、従来の評価だけでは説明できない袁世凱とその時代について記している。

 袁世凱は清未の中国に生まれ、文官になるための修学を放りだして武官としての道を歩み始める。時、おりから李鴻章や曽国藩が軍を基盤とした近代化を進めていた時期でもあり、袁世凱は李鴻章の部下として朝鮮駐留部隊等で経験を積み、中央の政局にも係るようになり出世してゆく。ただ、この時期の袁世凱は、「西太后の死後に、一篇の命令によってすべての役職を解かれ、「隠棲」を余儀なくされたことからわかるように、彼はやはり一官僚に過ぎなかったのである」(pp.58-59)。
 彼を救ったのは皮肉にも革命派が火の手を上げた辛亥革命であった。劣勢の清軍は、彼を隠棲先から呼び返し軍の指揮権を与えざるを得なかった。革命派とのやりとりの中で彼は清朝を裏切る形で臨時政府側につき、清朝に引導を渡し臨時大総統に就任する。
 大総統就任後の袁世凱は権力に固執し、宋教仁を暗殺させるなど権力闘争に明け暮れ、最後には皇帝即位まで行き着く。暗いイメージのまとわりつく所以であろう。ただ、本書で書かれる通り、彼は清末には立憲君主制を支持していたように、ラディカルな立場は取らなかったものの基本的に改革派であり、また著者は皇帝就任に関しても「皇帝である袁に忠誠を尽くすことが、すなわち、中華民国に忠誠を尽くすことになるような、袁自身の存在と国家を一体化させたような国家」(p.88)を目指していた、とする。前近代の君主制とは異なる、近代的な君主制を目指していたというところであろう。

 類書とくらべてわかりやすかった部分は、清末の立憲制への試みと、チベット・モンゴルの独立に関する問題だろうか。いずれも要点をおさえつつ整理されており、予備知識の少ない人間にも読みやすい。
 世界史リブレット人シリーズの中でも本書は評伝として「当たり」の部類に入ると思われる。興味のある方には一読をおすすめする。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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