近況・新刊情報と最近読んだ本など

 そろそろ朝晩冷えてきましたがいかがお過ごしでしょうか。こんな日は読書の秋と称して温かい部屋で本を読むに限ります(お前はいつもそれだろう、とか言ってはいけない)。
 今月はちと資金繰りが厳しいので食費を若干削りつつ、本代も節約せねばなりません。世知辛いことです。

 さて、新刊情報。
 風響社のブックレット「アジアを学ぼう」シリーズから『亡命者の20世紀』という本が出ます。発売日は15日。目次を見てみるといろいろ興味深い名前が目白押しですが、中でもバスマチ蜂起の指導者の一人、ゼキ・ヴェリディ・トガンが目玉でしょうか。他にもアブデュルレシト・イブラヒムやクルバンガリーの名前なども。
 中公新書10月の新刊には『水中考古学』。元寇船の発見がニュースになったのは記憶に新しいですが、詳細は載っているのでしょうか。同11月には鍛代敏雄『戦国大名の正体 家中粛清と権威志向』、楊海英『日本陸軍とモンゴル 興安軍官学校の知られざる戦い』。丸島先生の戦国大名外交本か、黒田先生の『戦国大名』か……どちらかかあるいは両方か、何がきっかけになったのか分かりませんが、先月の村井先生のメチエといい、今回の中公新書といい、ポンポンと戦国大名論の本が出ますねえ。
 メチエと言えば、11月の予定に岩崎育夫『世界史の図式』というタイトルが挙がっています。著者は『物語シンガポールの歴史』などを書かれた岩崎先生ですが、タイトルが大きすぎて何を書くのかさっぱり予想がつきません。果たしてどんな本なのでしょうか。
 ちくま学芸文庫から11月には『シュメール神話集成』が出るようです。
 名大出版会の『<驚異>の文化史』ですが、発売日が今月27日になった模様。
 新田義貞を主人公とした安部龍太郎さんの歴史小説『義貞の旗』は26日。

 以下、最近読んだ本と観たDVD。

■古川隆久『近衛文麿』
 人物叢書の新刊。そう言えばまだ出てなかったんだなあという感もある近衛文麿の評伝です。古川先生、『大正天皇』『東条英機』『近衛文麿』『昭和天皇』と書かれていて、ひとりで近代日本史評伝集みたいなことになってますね。
 よく東条ばかり取り沙汰されますが、なんだかんだ近衛の責任てのは大きいんじゃないのか、という話を見かけるので、この機会に読んでみました。
 帯の文句は「彼はポピュリストだったのか!」であって、彼は人気取り政治家ではなく、彼なりの一貫した考えがあって行動していたのである、というのがメインの論旨(そしてその考えというのもまた独善的で問題のある……)。平泉澄と仲が良かったという話も出てきてさもありなん感を覚えたり。
 近衛の責任については今更事細かに論じるまでもなく大きいということの模様。日米開戦回避に奔走したのは事実とは言え、そもそも日中戦争を泥沼化させ、三国同盟を結び、日米開戦の原因を作ったのは近衛じゃないかと言われれば確かにそうだと頷くしかないわけです。
 一つ気になるのは近衛の思想について、それが「哲学的」であるとし、「哲学的」という言葉を非常にネガティブに使っていることで、哲学も少しながらかじっている人間としてはちょっといただけないなあと。おそらく、現実から離れた理想主義なのだと言いたいのでしょうが、近衛の理想が現代の価値観からかけ離れているので理想主義という言葉を使うとミスリードになるのでこんな表現になったのでしょう。それにしても、他に言い方はなかったのかしらと思わないでもないわけです。重箱の隅ではありますが。


■『太平記』
 ちびちび見ていた大河太平記ですが、やっと見終わりました! 大河ドラマを最初から最後まで一話も欠けずに見るというのは初めてだったので感慨もひとしおです。結構な買い物でしたが、それだけの価値はあったように思います。
 前にも書きましたが、本作では新田義貞が原作吉川太平記に比べかなり格好いいので嬉しいです。彼の最期については……まあ、史実だしなあと言ったところ。最後の2、3話くらい、かなり怒涛の展開で(まだ直冬とドンパチやってる)これちゃんと終わるのかと思ってましたが、なんとか話を畳んできたのでそこは流石だなあと。
 正成が死に、義貞が死に、後醍醐帝も亡くなって、師直が死に、直義が死に、最後に導誉と尊氏だけが残って、振り返ってみると大変な時代だったんだなあとドラマながら実感するわけであります。いつの間にか出てきて露出が増える桃井直常と細川顕氏は割といいキャラしてたような。
 私が好きな一人、赤松円心はそこそこの活躍。白旗城はもうちょっと長いシーンが欲しかったですが。
 いいタイミングでTwitterでも南北朝クラスタの皆さんが太平記実況大会なる催しを開催されまして(みんなで同時再生する)、私も参加させてもらいました。とても楽しかったです。


■『天地明察』
 かなり安くなっていたのを見かけたので購入。
 まず、映画化した場合に原作小説より良くなる作品というのは稀だと私は思っているのですが、本作もやっぱり原作の方が良かったなあという感想(原作の方のタイムスパンが長いので、二時間ちょっとでまとめるにはもともと無理があるとも言えます)。とは言え、主演の岡田准一さんの好演や舞台ガジェットの面白さもあって、それなりに楽しめました。関孝和宅の雰囲気など、孝和本人もセットで非常に好きです。
 上で書いた通り太平記を観終えた後にこちらに手を付けたので、本作冒頭からナレーションが真田広之(太平記で足利尊氏役)でびっくりしました。
 なお、授時暦ですが元代中国でアラビア天文学の影響を受けて成立したものと言われており、西アジアのムスリムの影響が江戸の日本に来ているのだなあと、本編とは全く関係ないところで感慨にふける私でありました。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

検索フォーム
カテゴリ
リンク
アクセスカウンター
月別アーカイブ