スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

生井英考『空の帝国 アメリカの20世紀』


 興亡の世界史第19巻。空を通じたアメリカ近現代史。
 
 興亡の世界史シリーズも完結してしばらく経っていてこのシリーズのレビューを書くのも久々だ。実はブックオフで好事家が手放したのか同シリーズがかなりまとまって置いてあり、この機会にと思って未入手の巻をまとめて購入したというわけである。
 アメリカ史についてはあまりこれまで読んでこなかったのだが、せっかく買ったのだからということで読んでみるとこれが意外に興味深い。

 本書は、「空」をキーワードにアメリカの20世紀を通して見るという構成になっている。そもそもイギリスの覇権が「シー・パワー」と不可分であったことを思えば、アメリカの覇権の時代を「エア・パワー」を通じて見るということはなるほど確かに理にかなっている。要するに(あまりこの言葉は使いたくないが)本書はある種のアメリカ帝国論でもある。
 話はライト兄弟から始まる飛行機/空軍の歴史と、アメリカの政治史/社会史が絡みあう形で進む。軍事の話と同時に、「空」に対するイメージの変遷なども語られる。かつそれは、プロパガンダ等を通じるまでもなく軍事と密接に関わりがある。ミリタリー系の叢書ではない一般向けの概説書としては珍しく、軍人の名前も多く出てくる。軍事史と社会史の関わりあいは読みどころの一つだろう。

 空軍だけでない軍事全般や、アメリカ政治史の方にやや寄り道が過ぎる嫌いはあり(特に後半、話が拡散しがちである)、主軸を見失わないようにしたいが、ランド・パワー、シー・パワーの時代からエア・パワーの時代へという道筋を立て、エア・パワーの自己確立史(さらっと流されているが、マハンとドゥーエは重要だろう)およびその後の展開として読むとなかなか面白い。

 なお、挟み込みのリーフレットで連載されている「歴史を記録したびと」は南川高志氏がタキトゥスについて書いている。氏はタキトゥスに「帝国」批判の原点を見ている。アメリカを扱う巻にこの稿をぶつけてきたのは南川氏なのか編集部なのか分からないが、なかなか考えさせられるものがある。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

検索フォーム
カテゴリ
リンク
アクセスカウンター
月別アーカイブ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。