近況・新刊情報と最近読んだ本など

 少し前の話で、うっかり書くのを忘れていたのですが、NHKの名作ドキュメンタリー『映像の世紀』のリメイク版『新・映像の世紀』の放送がはじまりました。第一回放送は10月25日で、次回は今月29日になるようです。
 実は私、旧『映像の世紀』(95年放送)を知らない世代なので、新旧を比較することはできません。とは言え、旧版の評価の高さは知っていたので期待して見たわけです。
 第一回放送ではちゃんと「オスマントルコ」ではなく「オスマン帝国」と言っている割にアラビアのロレンスの解釈が古いことにおいおいと思いつつも、それなりには楽しめました。一次大戦のカフカス戦線や亡命先のオランダで薪割りに勤しむヴィルヘルム2世など珍しい映像もあり、興味深かったので一応最後まで追ってみるつもりです。
 なお、旧版はBS1でデジタル・リマスター版を放送しているようですが、生憎私の家ではBSは映らないのでした。
 NHKの歴史関連のドキュメンタリーと言えば『文明の道』や『大モンゴル』が思い浮かびます。できたらDVD視聴できるようにして欲しいのですが、DVDが出ていないシリーズや、ハイビジョンスペシャル『ビザンチン帝国』のようにダイジェスト版(『千年の帝国ビザンチン』)しか出ていないシリーズなどもあり、NHKには頑張ってほしいところです(『ビザンチン帝国』については割と最近の作品である上に11年に再放送しているので映像が残っていないわけでもないと思うのですけれども)。

 さて、新刊情報。
 呉座勇一先生の『一揆の原理』がちくま学芸文庫に収録されるようです。前から読もうと思っていたのですが確保できていなかったので、この機会に買おうと思います。
 同じくちくまから14日、選書で後藤健『メソポタミアとインダスのあいだ─知られざる海洋の古代文明』という本が。
 12月16日、京都大学学術出版会からプロコピオス『秘史』が出ます。ユスティニアヌス時代のあれやこれやをすっぱ抜いた問題の書。『戦史』の方も是非出していただきたいものであります。
 18日に岡田英弘先生が『チンギス・ハーンとその子孫』という本を。ただ、出版社がビジネス社ということで割と不安なのですが。
 新書では集英社から『消えたイングランド王国』というタイトルが。著者は『イングランド王国前史』などの桜井先生。ノルマン・コンクエスト以前のイングランドの歴史について書いた本のようです。
 あとは塩野七生さんが『ギリシア人の物語』というシリーズを始動させるようで。うーむ……。

以下、最近読んだ本
 

■藤村シシン『古代ギリシャのリアル』
 手に取るまでは生活史系の本かと思っていたんですが(そういう話もあるものの)、ギリシャ神話についての話題が多く、それがほぼ頁数で半分強を占めています。割と筆致はユルい感じですが、神話関係の頁を中心にこれでもかと出典註が付いているので親切。参考文献リストもこの手の本としては例外的なほどに充実しています。
 メインの部分にはオリンポス12神の履歴書という形で神々の経歴やエピソードを集めています。
 神話そのものの話はもちろん、メタな話(ミケーネ時代にはポセイドンが最高神だった、ゼウスが浮気症なのは実は色んな人達が俺の先祖はゼウスだと主張したがったから……などなど)も一緒に楽しめる実にいい本です。
 最近とあるゲームのおかげでギリシャ神話に登場する英雄たちに興味が出てきたのですが、神の話が多く、彼ら(ヘラクレスや、イアソン、トロイア戦争の英雄たちなど)についての記述はあまりないので続編があればそこらにも期待したいところ。


■丸山裕美子『清少納言と紫式部――和漢混交時代の宮の女房』
 日本史リブレット人の新刊。タイトルはこの二人で、伝記的な情報もそれなりにあるもののシリーズの売り文句「人を通して時代を読む」の通り、この二人を通じて、①一条天皇とその後宮②女房たちの世界③受領④男性と女性のそれぞれの日記、という広い視野の内容の章立てになっています。
 なぜ受領が出てくるかというと清少納言も紫式部も受領の娘で、他の同時代の女流作家も受領の娘や妻であったから、という理由の模様。受領は任官すると現地に赴任するのが原則で、妻や娘もそれに付き従うこともよくあり、その経験が当時の女流文学に新しい息吹を吹き込んだのではないか、とのこと。
 平安時代とは言え、もう摂関政治の上に国司が徴税請負人化している時期になっているので、ほぼほぼ中世の観があり、武家が表立ってどうこうということはないものの、時代の移り変わりを実感できる部分でもあります。
 この時期は伊藤正敏先生が『寺社勢力の中世』で徴税請負制の構造腐敗について書いた後「絢爛たる王朝絵巻はこうした地方切り捨てのうえに成り立っていた」と述べているわけで、まあ素直に持ち上げることはできないわけですが、それはそれこれはこれ。面白い本ではありました。


■福島金治『北条時宗と安達泰盛――新しい幕府への胎動と抵抗』
 積んであった本を消化する一環で読みました。鎌倉幕府と言えば定期的に内紛(というか有力者潰し)をやっているイメージがありますが、この時期については幕府の零細御家人の救済をどうするのかだとか、御家人の所領を保護するにはだとか、いろいろと課題があってその方針の違いからゴタゴタに発展していったようです。
 かなり前に『蒙古合戦と鎌倉幕府の滅亡』を読んで以降、この時期の鎌倉幕府関連の本はご無沙汰だったのでリブレットなのに読み進めるのに苦労しました。
 なお、蒙古襲来の事件そのものについては事のついで程度であまり詳しい話はありません(頁数上しかたないでしょうが)。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

検索フォーム
カテゴリ
リンク
アクセスカウンター
月別アーカイブ