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玉木俊明『ヨーロッパ覇権史』


 全世界において、近代化という言葉がヨーロッパ化を指したことは言を俟たないが、ヨーロッパ発の「普遍性」が世界を覆うのは19世紀以降のことである。ヨーロッパはたかだか一世紀の間にヨーロッパ中心主義の強固な幻想を作り上げた。言い換えれば、それだけ19世紀のヨーロッパによる支配の影響が強かったということだと著者は述べる。では、そのヨーロッパの覇権はどのようにして展開したのか、本書は、それを述べることを目的としている。
 
 経済史家の手による本であり、当然ながらあまり歴史上の個人名は出てこない。経済の覇権を握るヘゲモニー国家がオランダ、イギリス、アメリカと移り変わるわけだが、前史としてのポルトガル・スペインから話を進め、商業上のシステムや国家のバックアップの度合いなどの諸条件が最も整った状態に初めて至ったのがイギリスである、とのことであるようだ。そしてイギリスが固めたルールは今も生き続けている。
 叙述の枠組み自体は基本的にウォーラーステインの世界システム論に則っている。世界システム論は、地球規模でのシステムを叙述するにはあまりにヨーロッパ中心主義であるという批判があるが、もとよりヨーロッパの覇権を記述するのが目的の本書であれば、その批判は当たらない(しかし手頃なところで言えば水島司『グローバル・ヒストリー入門』や岡本隆司『中国近代史』などを読んでおいたほうが視点が偏らずに済むのは事実である)。
 ただし、ウォーラーステインが軽視ないし無視していた輸送コスト、商品連鎖の問題については著者独自の修正が入る。ここは読みどころである。 
 最後に示される近代世界システム以後の見通しはあまり明るいとは言えないが、もとより未来予測は歴史学者の仕事ではないので、このあたりはなるほど著者の所感はそうなのか、という程度で済ませておこう。

 文章は明晰かつ読みやすく、予備知識もさして必要ない。新たな発見がある本かというとその点は微妙だったが、200頁ほどで手頃にまとまっているので、何かあった時に読み返すには非常に便利だろう。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
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