ヴァンダル興亡史/松谷健二


 副題は「地中海制覇の夢」
 他のゲルマン系諸国家が名目上はローマの傘下にあったのに対し、北アフリカに初めて独立国家を築いたヴァンダルを扱う。
 著者は以前紹介した「東ゴート興亡史」と同じく松谷健二氏。「カルタゴ興亡史」と合わせた三部作の最後という位置づけらしい。
 とまれ、目玉は前半部のガイセリック(ゲイゼリック)一代記である。まるで蛮族にあるまじき陸海両軍の統率に恐るべき才能を見せたヴァンダル王だ。
 彼の鬼才によりパッとアフリカに現れたように見えたヴァンダル王国は、本書後半部で語られるように東ローマ帝国の皇帝ユスティニアヌスと将軍ベリサリウスによってほとんど跡形もなく滅亡してしまう
 うたかたのように消えたヴァンダル王国の通史は、恐らく本邦初である。(ただまあ、消えたとは言っても本書では語られていないがスラヴ化したゲルマン人の一派(定義にも諸説ある)のヴェンド人は、ヴァンダルに何らかの関係があるのではないか、とする論もある)。

 いつものように蛮族擁護の言葉がちらほら見られる。野蛮さを示す「ヴァンダリズム」などという言葉が残ってしまっているが、それはたまたまヴァンダル族の通り道に、記録を残せる知識階級が多かったというだけで、特段他のゲルマン諸族と暴力的な面で変わるところはなかった。むしろ、大過なくアフリカを収めていたことに注目すべきではないか――。まあ、そんなところである。同感だ。

章立て

はじめに
一 民族大移動の波濤の一つ
二 アフリカ
三 国造り……海賊国家?
四 ポスト・ゲイゼリック
五 滅亡
あとがき
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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