近況・新刊情報と最近読んだ本など

 ご挨拶が遅れましたがあけましておめでとうございます。
 2016年はヌルハチの後金建国から400年にあたります。去年は八旗に関する研究書が二冊も出ましたが、途中まで読んで積んでいるのでちゃんと通読せねばと思います。

 新年最初の記事は真田丸に便乗したアイユーブのコラムでした。
 真田丸は一話・二話を見た限りでは勝頼がなかなか格好いい悲劇の武将として描かれていて好印象。監修には黒田・平山・丸島の三先生方に加え、軍事監修に西股先生を入れるという豪華さぶりで、コント的な部分も三谷脚本の本領発揮といった体です。お話は天正壬午の乱に突入していきますが、引き続き見守っていきたいと思います。

 さて、新刊情報。
 中公新書今月の新刊は『キリスト教と戦争』、『古田織部』、『イタリア現代史』といろいろ面白そうな本が出ます。発売日は25日。
 スンナ派神学を正面から扱った貴重な本、松山洋平『イスラーム神学』が28日。
 東北の古代史四巻『三十八年戦争と蝦夷政策の転換』は来月15日に。
 また、来月25日にはイスラーム原典叢書シリーズ『ムスリム同胞団の思想』の下巻が出ます。これで残すところ未刊は劉智『天方性理』だけになります。2010年11月にシリーズが始まった当初は四ヶ月に一冊刊行という触れ込みでしたが、遅れたもののやっと終わりが見えてきたというところでしょうか。

 以下、最近読んだ本。
 

■矢野久美子『ハンナ・アーレント――「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』
 積読の消化ということで読みました。
 むろんアーレントの主著の解説もあるわけですが、アーレント哲学の入門書と言うよりはアーレント伝の趣きのある本で、彼女の生き方について知るという読み方をする方が(すくなくとも門外漢には)得るものが大きかったかなと思います。
 しかし、アーレントの経歴を見ていると、ハイデガーはもとより、ヤスパースやフッサール、ベンヤミンと名だたる思想家・哲学者たちとの関係があり、人脈の時点でとんでもないなあと思わざるを得ません。
 アーレントとシオニズムの関係、あるいはイスラエル批判などはアラブ史方面からイスラエルを見てきた人間にとって興味ある部分で、そのあたりの記述も書き込まれています。
 アーレント哲学(という言い方はせず、むしろアーレント「の」哲学の方がふさわしいかもしれないと思ったりもしますが)について知る本というよりは、アーレントがどう生きたかということを知るのにはいいのではないでしょうか。


■鍛代敏雄『戦国大名の正体――家中粛清と権威志向』
 ここのところ戦国大名論の本がよく出ていますが、本書もその一冊。著者の鍛代先生は中世の寺社と都市・交通・経済などを研究されている方のようです。
 取っているのは大量の事例で押し潰して一般化するという方法。しかもその結論が各章の最後にちょっとだけ書かれているだけなので注意しないと読み飛ばしてしまいそうになります。ただまあ、このちょっとの結論を述べるためにどれだけ史料を渉猟しないといけないか、ということはよく分かったり。
 読み方に気をつけなければならないこともあって、ちょっと新書向きではない手法なのではと思わないでもないわけですが、新書でなければ読まなかったかもなあとも思うのでこれも良し悪しですね。
 新書の戦国大名論と言えば黒田基樹先生の『戦国大名』がありますが、あちらは深掘りしており史料の残り方のために後北条がどうしても多くなるところ、本書は各地の事例を集めているので相互補完できるかなと。


■丸島和洋『真田四代と信繁』
■すずき孔『マンガで読む真田三代』
 大河ドラマ『真田丸』が始まるということでいろいろ関連本が出ていますが、新書で値段が手頃かつ一般書でも定評があり今回時代考証にも参加されている丸島先生の『真田四代と信繁』を読んでみました。もともと信州の国衆であった真田一族が武田滅亡の混乱も乗り越えて近世大名になってゆくさまは、なかなか先が読めません。やはり、昌幸の生き残りのための写り身三昧が一番面白いところと思います。
 お値段800円で300頁と非常にお買い得な上、地図も多く分かりやすくなっていておすすめの一冊です(ちらほらと中近世移行期の最近の研究での議論についての言及もあるので、興味を持ったら別の本を読んでみるのもいいでしょう)。
 すずきさんのマンガの方は、活字本を読む前に簡単に把握しておこうと思って買いました。こちらも監修に真田丸時代考証の平山先生が付いています。ノリは学習マンガをもっと詳しくして対象年齢を上げたような感じ。大体の流れだけ分かればいいやと思っていたのですが、思いの外おもしろかったのでいい買い物でした。
 なお、このマンガ、出版が戎光祥で、普段は日本史の一般書や研究書ばかり出していて出版社としてマンガは初挑戦のようです。今後とも戎光祥出版さんには頑張ってもらいたいものです。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
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