北人伝説/マイケル・クライトン


 10世紀、バグダードの官吏アフマド・イブン・ファドランはブルガールの王国に使者として赴く最中に、ある事件によって北人(ヴァイキング)と同行することになってしまう。
 著者は「ジュラシック・パーク」で知られるマイケル・クライトン。ちなみに、種本の「ヴォルガ・ブルガール旅行記/イブン・ファドラン」はつい最近平凡社東洋文庫から邦訳の改訂版が出版されたので入手は容易。
 手記と読み比べれば分かるがアフマドは実際にはブルガール王国に滞在し、任務を果たしている。それをクライトンは進路を更に北に伸ばし、ヴァイキングの王国にまで足を伸ばさせている。作品途中までは手記そのものであり、虚実の境界を感じさせない手腕は流石である。

 映画化もされたようだが、やはりこの本のおもしろさはまるでアラブ人の手記そのままの文体(イブン・ジュバイルの旅行記や、アラブが見た十字軍などを見れば分かる)と、手記の体裁であると思うので、まずは映画を見るより本を読みたい。まあ、その体裁の為に序盤が少々読み辛いのも確かなのだが。

 ストーリーはすこぶる面白い。なんだかんだと言いつつ書きつつヴァイキングの間で馴染み、友情を育んでゆくアフマドが最後に取る行動――。
 SFも書く人らしさとして最後に考察めいた文も置いて、このストーリーの謎について考えさせる、が、当然それも虚構だが、さらにしかし、それを感じさせない。

 アラブの年代記の雰囲気が好きな人、ヴァイキングに興味のある人、クライトンファン、様々な人に勧められる本である。
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鉄勒京二

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