近況・新刊情報と最近読んだ本など

 最近知ったのですが、12世紀末から13世紀初頭にかけて、旧ムラービト朝系の勢力であるガーニヤ家がマジョルカ島からイフリーキヤに来てムワッヒド朝に対する叛乱を扇動していたらしいとのこと。しかも、その叛乱にアイユーブ朝が一枚噛んでいるらしいという話もあり、ちょっと興味が出ています。
 定価23000円のユネスコ版『アフリカの歴史』第四巻を3000円弱で入手できたので、完史の関連する記事を訳し終われば、ブログにまとめたいなあと思っています。

 ところで、吉川弘文館の人物叢書の続刊予定書目一覧が更新されており、一度消えていた『足利直義』が、著者を清水克行先生に変更して復活しています。
 人物叢書は著者の寿命が尽きるのが早いか原稿が上がるのが早いかみたいなところのあるシリーズですが、清水先生は筆の早い方ですし、読みやすく面白いものを書かれる方なので、期待できそうです。

 さて、新刊情報。
 講談社学術文庫6月の興亡の世界史は姜尚中・玄武岩『大日本・満州帝国の遺産』。第一期はこれで完結ですが、二期はいつになるんでしょうかね。この巻はハードカバー版でもまだ読んでいないのでこの機会に。
 同6月にカルピニとルブルクの『中央アジア・蒙古旅行記』も出るようです。護雅夫先生の名訳ですが、手に取りやすくなるのは実にありがたいところ。
 白水社6月では、ローマものの評伝でおなじみゴールズワーシーの『アントニウスとクレオパトラ』が上下巻で。また、スコット・アンダーソン『ロレンスがいたアラビア』という本も予定に挙がっています。出版社のページで情報を見ると「アラブ世界を舞台に暗躍した4人の諜報員の動きを追い」と書いてありますが、果たして誰が扱われるんでしょうか(ベル女史あたり?)。

 では、以下最近読んだ本(今回は二冊)
 

■福田千鶴『後藤又兵衛』
 真田丸便乗企画なのか、後藤又兵衛の本が中公新書から出ました。
 信繁や信幸、昌幸など、真田家関連の本は俗流の粗造本から専門家が書いた評伝まで出版ラッシュになっていますが、話が進むについれて大坂の陣関連の本も色々と出てきそうな雰囲気です。できれば長宗我部盛親の評伝が読みたいなあなどと思ったりもしますが。
 さて、本書では後藤家の出自や、又兵衛の福岡出奔の理由など全体的に分からないことが多い(なぜ分からないかという理由は書いてあるので得るものはあるわけですが)上に、主家である黒田家の話も多いので、根気よく読む必要があると思われます。さりながら、どうやら又兵衛の本名が基次ではないかもしれないという衝撃の事実があったり、大坂の陣での動向はかなり詳しかったりと、その辺は面白い部分。
 福田先生は実は浪人で一冊書きたかったのだとあとがきで書いていますが、本書では、武士の主体的流動性の高かった中世から、お上の人事異動で大名でさえ領地替えになる(また、主家に固定的に仕える)近世への移行期に、それをよしとできず、あるいはせず、抵抗した人々の一人として又兵衛を位置づけています。
 なお、福田先生の秀頼に対する贔屓の引き倒しはいつも通りなので、そこは差っ引いて読む方がいいでしょう。


■山本兼一『おれは清麿』
 最近巷で日本刀が流行っていますが、その流れで近藤勇の虎徹が贋作で、実は刀工源清麿の刀に偽銘を切ったものではないかという話があるのを知り、近藤が愛刀として用いて虎徹と遜色なかった刀を打った清麿ってどんな人物だったんだろうと興味が湧いてきたので、まずは刀剣ものの小説をいくつか書いている山本兼一さんの作品から入ってみました。
 主人公の源清麿こと山浦正行は刀のことが第一で、家族も含めて他のことが二の次三の次になってしまう人物ですが、その一徹さのためにいろんな人との縁を得て刀工として大成していくというお話。
 鍛刀の描写については、巻末にある通り精力的な取材をしたことが伺え、凄いの一言。舞台は幕末ではありますが、時代背景として空気が反映されてはいるものの、有名人で出てくるのは佐久間象山くらいのもので、職人ものの時代小説に徹しているのは好感が持てるところでしょうか。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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