廃帝綺譚/宇月原清明


 タイトル通り遂にそこに居ることが出来なくなった皇帝達を描いた物語。
 多くの人はお気付きと思うが、基本的にこのブログでは日本史・中国史ものの歴史小説は扱っていない。まあ、あまり読まないのと、日本史・中国史なら他にも取り扱っているサイトなりブログなりがあるだろうからだ。が、中国史ものに関しては例外がある。楊家将もそうだったが、北方草原が関わる時だ。
 何しろこの作品で最初に扱われるのが大元ウルスを北帰させた皇帝、順帝……いや、大カーン、トゴン・テムルである。手に取らぬわけにはいくまいと思い図書館で借りてきた。その期待に関しては、特に報われた感もないのだが。

 日本史、特に戦国以前は専門外なので、最後の後鳥羽院の話も含めて一つの作品であろう本作の根ほり葉ほりの主題の詮索は避けるが、正統史観からは一歩下がったものの見方はありがたい。

 個人的に気に入ったのは永楽帝と鄭和の「南海彷徨」だ。何故「廃帝」の物語に、建文帝ではなく永楽帝が選ばれたのか――。北原を駆け、駆けることを求め、能わず、帝位に上った永楽帝と、南海を征き続けた鄭和の思いに感じ入る。
 同じ作者の「安徳天皇漂海記」は未読なのだが、機会が在れば読んでみようと思う。

章立て

北帰茫茫――元朝篇
南海彷徨――明初篇
禁城洛陽――明末篇
大海絶歌――隠岐篇
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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