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宮原辰夫『インド・イスラーム王朝の物語とその建築物』


 副題は「デリー・スルターン朝からムガル帝国までの500年の歴史をたどる」。
 
 著者は政治学・地域研究の専門家で、史学や建築学の専門家ではないとのこと。なぜインドのイスラーム建築について本を書いているのか少し気になるところではある(本人曰く、荒松雄氏の影響があるとのことだが)。
 それはさておき、タイトルから建築史の話がメインかと思っていたのだが、中身を読むとそういうわけでもないらしい。副題通りデリー・スルタン朝時代の開始から、ムガル帝国のアウラングゼーブ帝までの歴史をスルタン毎に一通り追って、その中で要所要所に建築関連の話題と写真を挟む、という構成になっている(なお戦史・政治史の話が多く、建築以外の文化史についてはあまり触れられていない)。
 記述はスタンダードに時系列順に進み事実の羅列が多いのでやや冗長なところはあるが、中近世インド・ムスリム政権史を一通り眺める上では便利な本である。

 建築に関しては、有名なクトゥブ・ミナールを含む周辺遺跡群の成立過程(アイバクが全て計画して建築したわけではなく、何代にも渡って成立したらしい)や、トゥグルク朝のスルタン、ムハンマド・ビン・トゥグルクの建設した新都トゥグルカーバードなどの話題が興味深い。建築史の本は建築の専門的な議論に立ち入って読みづらくなることが多いが、本書では歴史記述の中に関連した建築物に関する記述を挟み込んでいるので興味が湧きやすく、読みやすい。中ページの建築の写真は一部を除いてカラーが多いのも嬉しい(その代わりソフトカバーの割に値段が少し高いのはいたしかたないところか)。

 著者は「おわりに」で、世界遺産以外のインドの歴史的建築物が等閑視されていることを述べたあと、「したがって、本書の目的は、一般の方にも、インド・イスラーム王朝の物語とその建築物を通して、世界遺産の間に埋もれた魅力的で価値のある歴史的遺産がインドに多数存在していることを知って頂くことである」と書いている。その目的は、十分に果たされていると言えるだろう。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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