近況・新刊情報と最近読んだ本など

 こんにちは、有給一日に加えて通常の休みをずらしてつなげることにより盆休みというか三連休をゲットすることに成功した管理人です。暑い日々が続きますがいかがお過ごしでしょうか。
 私は「世界の文字の物語」展と「始皇帝と大兵馬俑」展に行く予定があるので楽しみにしています。
 展示会と言えば10月から京都文化博物館で「黄金のファラオと大ピラミッド展」もあるようです。相変わらず古代エジプトは人気ですねえ。

 さて、新刊情報。
 世界史リブレット人、今月の新刊は『ケマル・アタテュルク』と『鄭成功』の模様。ケマルは日本語で読める評伝が随分古い(その上ケマルにかなり寄っている)ものしかなかったので、今回の出版は実に有り難いことです。鄭成功は実は『国姓爺』というタイトルで日本史シリーズであるはずの吉川弘文館の人物叢書から一冊出ていたりするのですが、こちらは世界史シリーズなので視点の違いに注目です。
 また、慶応大出版会から9月に橋爪烈先生の『ブワイフ朝の政権構造』という専門書が出る模様。ブワイフ朝に関する概説といえば山川世界各国史の西アジア史を読むくらいしか方法がなかったわけですが、さて、この本の出版によってどう変わることか。この本自体もすこぶる面白そうなので楽しみです。

 以下、最近読んだ本。
 

■呉座勇一[編]『南朝研究の最前線』
 洋泉社の歴史新書yの「○○研究の最前線」シリーズから南朝本が出ました(ひと月ほど前に読み終わっていたのですがいつの間にかこれだけ日にちが経ってしまいました)。
 形式としては論集なのですが、そこはそれ、新書で出す以上は読みやすくという意識が働いているのか、どの論考も非常に読みやすいものになっています。この形式で新書を出すということに関して、洋泉社の判断は非常に英断であったなあと一読者としては思わざるをえないわけです。
 さて、建武政権および南朝と言えば網野善彦氏の『異形の王権』に代表されるようにブッ飛んだイメージの強いところで、実際これまでの学説もそれを先進性と見るか単なる逸脱と見るかはさておき、「どっかズレてる」ところに関しては異論がなかったようです。
 ところが、本書で紹介されている最近の研究動向によると、人材的にも組織としての組み立て的にも、鎌倉幕府からの継承が多く、また室町幕府へ引き継がれたものも多いことが判明してきている模様。また朝廷ラインでのつながりを見た時にも、建武政権以前から朝廷は改革に積極的であり、必ずしも後醍醐帝が異端であるとは言い切れないそうで。このあたりがマクロ視点からの建武政権・南朝の評価としてはインパクトの強い部分でしょうか。
 他、細かい所としては、新田一族が足利の庶流であって、足利と並立する源氏の嫡流ではなかったことが示されていたり、楠木正成の専論や鎌倉幕府滅亡後の北条一族の専論があるのも嬉しいところ。中先代の乱等に関しては基本的に尊氏の鎌倉行きと関連して必ず述べられるものの、乱を起こした側の視点から述べられることは少なかったですし、楠木正成は分からないことが多すぎて知名度のわりにはっきりしたことが述べにくい人物で、これまた彼本人について述べたものは案外少ないです。
 南北朝に興味がある人には必読ですし、日本中世史の流れを押えておきたい場合にも読んでおいた方がいいでしょう。


■深松英夫『孫文――近代化の岐路』
 岩波新書で中国近代史上の人物の評伝だと、岡本隆司先生の『李鴻章』、『袁世凱』が出版されてきましたが、今回は深町先生が孫文本を出されました。実際の所、孫文という人はキーパーソンであって彼抜きに中国の革命を語ることはできないものの、一方で外国を飛び回っており現場にいないことも多いので、中国の状況を書く事が多い中国近代史の概説ではあまり人物が見えてこないところがあるのですが、やはり評伝で読むと非常に分かりやすいです。
 現状を変化させねばならないという認識では一致しているにも関わらず、孫文の共和主義派と康有為-梁啓超ラインの立憲君主主義派が国内外で勢力争いをやっているのを見ると、なんだかどこも同じだなあと思わずにはいられません。
 本書では成功と失敗の狭間の中で、孫文が「民主のための独裁」という一見矛盾した道を進もうとしたことを示し、そこを軸線として記述が進められていきます。このあたりについては、一度中国近代史の概説を読みなおしてから再度もどってきて妥当かどうか判断したいところ。
 とは言え、いい本ではあるので先に挙げた岡本先生の『李鴻章』、『袁世凱』、それに長堀先生の『陳独秀』あたりと一緒に読むと、中国近代史が立体的につかめてくるのではないでしょうか。


■渡辺公三『闘うレヴィ=ストロース』
 事情があって構造主義に手を出したんですが、ぶっちゃけ難しいです。
 本書はあくまでレヴィ=ストロースの構造主義に関する本であり、もっと言えば彼が構造主義を用いていかなる研究をなしとげたかという本であって、彼の構造主義がいかなる影響を周辺分野に与えたかという視点は弱いので、その辺は別の本を当たりたいところ。まあ、別にレヴィ=ストロース本人や著者のせいかというとそんなことはないのですが。
 レヴィ=ストロース本人がいかなる研究人生を歩んできたかという点に関して言えば、そこは分かりやすく、また文章も読みにくいわけではないので、レヴィ=ストロース本人とその研究に興味がある人は読んでみてもいいのではないでしょうか。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
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