疾駆する草原の征服者 遼西夏金元/杉山正明


 講談社の中国の歴史8巻目。
 著者はおなじみのモンゴル帝国史の専門家、杉山正明教授だが、モンゴルの元よりもキタイの遼にページが割かれている。
 というか、遼の歴史の本だと思って読んだ方がいい。中国史シリーズの1巻としては甚だしくバランスを欠くが、遼の概説史として読めばこれほどの良書は日本にはそう無い。五代の軸となった突厥沙陀部にも詳しく、五代の時代が中原と草原の対立軸で読める。もっとも、いつもの杉山節なので読む時には注意を要しはするのだが(未読だが同シリーズの他の巻との整合性も取れていないのでは……?)。

 中華が一元の大国ではなく、唐・ウイグル・トゥプト(チベット)が鼎立していた、というような視点や、遼の文化遺産への注目など、なかなか面白く、平将門の「将門記」にキタイの記述があることや、「遣『遼』使」の話など、日本史との絡みも興味深い。
 同時代の歴史小説北方氏の「楊家将」の副読本としても役に立つ。

 まあ、大元ウルスについての著者の主張は彼の他の著作を読めば概ねつかめるが、金と西夏については筆を改めて貰えないものかとも思う。

章立て

はじめに 世界史のなかの中国史
第一章 巨大な変容への序奏
第二章 キタイ帝国への道
第三章 南北共存の時代へ
第四章 失われたキタイ帝国を訪ねて-歴史と現在を眺める
第五章 アジア東方のマルティ・ステイト・システム
第六章 ユーラシアの超域帝国モンゴルのもとで
おわりに グローバル化時代への扉
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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