設樂國廣『ケマル・アタテュルク』


 世界史リブレット人の一冊。副題は「トルコ国民の父」。
 
 ケマルは副題の通り、トルコ共和国を成立させた初代大統領である。世界史上の重要人物ではあるが、日本語で読める彼の評伝は古く、今回、読みやすい本が出たのは実にありがたいことである。

 記述はほぼ時系列順だが、やったことの分野分けがされているので少し前後するところもある。分量は第一次世界大戦の終結までと祖国解放戦争で1/4づつ、それ以後で半分といったところか。戦史的な話題は少ない(ガリポリ戦役の記述もあまりない)が、軍内でのケマルの異動については意外なほど詳しい。祖国解放戦争については、各地の旧オスマン軍の動きも述べられ、雑多な抵抗運動がやがてケマルのもとでまとめ上げられていく過程が述べられる。この段階ではケマルの戦友であったキャーズィム・カラベキルらが後にケマルのもとを去っていくことを考えると皮肉である。
 戦後に関してはスルタン制・カリフ制の段階的な廃止や、国際関係、国内の反対派への対処、憲法制定、ライクリキ政策の実施など一通りのことが述べられている。独裁者と言われるケマルだが、実際のところは野党の設立も試みている。ただ、ケマルに協力的だった野党党首アリ・フェトヒさえその先鋭化を抑えきれなくなり、解散させざるを得なかったという。

 不満があるとすれば著者のケマル評はほぼなく(強いて言えば最初に強引な政治姿勢に功罪両面がある旨述べられているくらいか)、そこはもう少し踏み込んでほしかったところではある。とは言え、最初に書いた通り、ケマルの評伝としては手頃かつ最新のものであるので、興味のある方はやはり読むべき一冊ではあろう。
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鉄勒京二

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