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藤沢房俊『ガリバルディ』


 「赤シャツ隊」で有名なイタリア統一の立役者の一人、ガリバルディの評伝。
 
 イタリア統一の三傑と言えばカヴール、ガリバルディ、マッツィーニの三人だが、中でも最も「英雄」らしいのがガリバルディであろう。リアルポリティークの権化であったカヴールと、理想家肌で暴発と失敗を繰り返す革命家マッツィーニの間にあって赤シャツ隊を率いてシチリア・南イタリアを解放し、イタリア統一に貢献した。
 本書を読む限りでは、カヴールはどこまでも政治家であって英雄や軍人ではなく、マッツィーニはガリバルディと同じく行動の人ではあったが知名度とカリスマ性はあるものの現実との妥協が苦手であった(彼は共和主義者であったが、結局イタリアは王国として統一されるところとなる)。
 この大筋だけ見ると、ガリバルディは成功を納め、人気も一手に受けた行動の人といった体なのだが、実際のところ、本書でのガリバルディ像はかならずしもその通りではない。彼の戦歴は南米ウルグアイの独立運動にはじまり、ローマ共和国での戦い、イタリアの統一、普仏戦争でのフランス側での参戦など、必ずしもイタリアに限定されるものではない。また、酷い敗北もしばしばあり、晩年には頑固親父と化して政権も扱いに困っていたらしいあたり、なかなかの難物であったようだ。南イタリアの献上を成し遂げたという点が大きく評価されているが、そこだけクローズアップしていては見えてこないのがガリバルディの人物像である、というところだろう。

 それにしても、読み進めていくと失敗にもめげず、何度か死線を掻い潜っても長生きして75年の天寿を全うしたあたり、例えどうしようもないところがあっても(特に女性関係は割とだらしない)歴史に名を残すだけのことはあるのだという思いを抱く。その何割かが運だとしてもである。
 面白いのは、19世紀のヨーロッパにおけるメディアの役割で、イタリアと同じようにドイツに乱立する領邦国家の統一を行ったビスマルクがメディアを利用したように、ガリバルディの動向を伝える新聞もまた彼の人気の成長に一役買っているというところだ。
 生前から英雄化は進み(メディアによって「作られた英雄」などと言われるロレンスと違って実際にかなりの活躍をしたという下地はあるのだが)、著者によると東アジアでもその英雄性は模範とされたという。

 最近の中公新書の評伝には良書が多いが、読みやすさから言っても、これもかなりいい本であった。ガリバルディ本人の人生だけでなく、背景としてのイタリア統一史も一通り理解できるように書き込まれているので、世界史B程度の予備知識でも十分読むことができるだろう。一冊目としても安心して勧められる本であった
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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