近況・新刊情報と最近読んだ本など

 近況記事を書くほど読んだ本が溜まっていなかったので年始の挨拶をしておりませんでした。今更ですが明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
 実は仕事の方で引っ越すことになりまして、生まれてこの方過ごしてきた瀬戸内を離れて日本海側に出て一ヶ月というところになっています。大きな本屋が近場にないのがいささか不便ですが、通勤時間は圧倒的に短縮されたので作業する時間はできそうかなあというところ。

 最近、某ゲームの影響で色々部外にも影響があるようです(というか私も便乗して年始のコラムを書いたわけですが)。どうやらその流れにのって筑摩書房が学芸文庫の岩村忍『暗殺者教国』を復刊したとのこと。あの本、ニザール派の本と見せかけて途中からモンゴルの話になっていくので、その辺大丈夫かなあとは思いつつ、サブカルの影響で学術界隈の本が復刊されるのは大いに歓迎したいところです。
 本の販促の話と言えばつい先日京都に遊びに行った折に折角だからということで丸善の京都本店に行ってたのですが、岡本隆司先生の『中国の誕生』のサイン本があったので結構な予定外の出費になったものの買ってしまうという一幕が……。

 それはさておき新刊情報。
 戎光祥出版の「シリーズ・実像に迫る」から生駒孝臣『楠木正成・正行』が今月23日。大楠公であれ小楠公であれ、楠木一党は軍記以外では史料が少なくあまりよくわかっていない人たちだと思うのですが、さてどう料理してくるのか。
 同シリーズからは4月に亀田俊和『征夷大将軍・護良親王』も予定に挙がっています。亀田先生は高師直や足利直義の評伝も書いていますが、今回は護良親王とは。
 角川選書より平山優『武田氏滅亡』が今月24日。選書なのに750頁3000円越えという何故分冊しなかったのかという疑問が湧くようなシロモノ。しかしながら平山先生の武田本とあれば関心のある向きには必読でしょう。
 集英社新書3月に神田千里『宣教師と『太平記』』。日本に来る宣教師はみんな太平記を読んでいて、なぜかと言えば太平記こそ当時の日本で大人気かつ基礎教養であったからだ、という内容の本の模様。とても面白そうです。
 山川出版社の世界史リブレットの新刊『オスマン帝国治下のアラブ社会』は、そろそろ出てもいい頃なんですがAmazonでは予約中になっています。
 ちくま学芸文庫3月には山内進『増補 十字軍の思想』。新書で出ていたものが増補版になって文庫に収録されるようです。

 以下、最近読んだ本。
 

■中澤克昭『真田氏三代と信濃・大阪の合戦』
 すっかり書くタイミングを逃してしまいましたが、大河ドラマ『真田丸』もめでたく最終話を迎え、私も完走することができました。
 本書は吉川弘文館が放送中を狙ったのか割とギリギリのタイミングでねじ込んできたような印象がありますが、しかしそこはそれ、流石は天下の吉川弘文館と中澤先生というべきか、きっちり独自色を出した良書になっています。
 第一には帯にある通り第一次上田合戦の実態を新発見の絵図から推測した部分が目玉で面白いところ。
 他にも諸説整理した上で真田丸の実像(タイトルは「真田氏三代」ですが、信繁も取り扱っています)や、名胡桃を昌幸が真田の墓所があると言い張り確保した話の虚実など、興味深い話が目白押しとなっています。
 時系列的にはやや前後してすっ飛ぶところがあるので、基本的な流れは丸島先生の『真田三代と信繁』あたりで押さえておくといいのではないでしょうか。
 なお、このシリーズ恒例の巻末の史跡案内のコーナーは信濃が中心で大阪の方は出てこないのでそこは別の本を当たりましょう。


■横山宏章『孫文と陳独秀』
 孫文は中国国民党の創設者で陳独秀は中国共産党の創設者です……と、整理してしまえれば簡単なんですが、国共合作のこともあり、また同時に陳独秀が共産党から追放されたというような事情もあり、単純に横並びにはできない二人ではあります。
 著者の横山先生は割と孫文に批判的でして、帯にも「陳独秀とは何者か? 孫文は民主主義国家の父か?」と大文字で強調されており「従来の評価を一変させる!」という煽り文句がついています。
 さりながら、孫文って案外独裁主義的なところがある(孫文の主観的には憲政へ至るための軍事独裁、という位置づけではあったらしいのですが)という評価は最近の流れらしく、深町先生の『孫文――近代化の岐路』でもその軸で記述されていました。
 一方の陳独秀は中国共産党がちょくちょく名誉回復をしているらしく、不完全ながらもいっときの裏切り者扱いは影を潜めているようで、こちらも長堀先生の『陳独秀』で述べられていた通り。
 というわけで、帯の煽り文句通り従来の評価が一変しているかというと実はそうでもないのですが(著者の書き方は割とキツいのでたしかにインパクトはありますけれども)、ある種の対比列伝形式になっているので、中国近現代を二人の革命家を通じて見る、という読み方をすると非常に良い本になっています。
 清末民初は政治と軍事と思想が有機的に絡み合っているのが面白い時代ですが、そのあたりも本書では見えてくるので得るものは大きかったのでありました。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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