改宗者クルチ・アリ/オスマン・ネジミ・ギュルメン


「16世紀地中海を跋扈した大海賊の数奇な生涯」――本書帯の文句より。
 スレイマン大帝の最盛期を迎え、斜陽に差し掛かるオスマン帝国で海軍を支え続けたクルチ・アリ。その養子にして奴隷であったルカの手記という形で、クルチ・アリの生涯が語られる。
 訳者あとがきによれば、トルコの小説家オスマン・ネジミ・ギュルメンの手による本作は、数カ国が翻訳の為の版権を取ったが、翻訳が出版されたのは日本が初だそうである。
 プレヴェザの英雄ハイレディン・バルバロスがまだ引退していない時代から物語は始まる。
 クルチ・アリはイタリアの生まれでありながら、海賊に攫われ、奴隷としてガレー船の漕ぎ台に繋がれたが船主に見込まれ、船を任せられるようになり、イスラムに改宗した後は、レパントで負けたものの隊列を崩さぬまま港へ生還し、翌年には艦隊をほぼ復活させ、最後にはオスマン帝国海軍の最高位である提督の地位に就く。

 著者の問題か訳者の問題かは分からないが、一文一文、一段落一段落が長いので、遠目に見るとページがかなり黒い。慣れないと少々読むのに疲れる文体だ。
 その上、カルロス(スペイン王カルロス1世=皇帝カール5世)やドン・フアン(カール5世の庶子)、フランソワ(フランス国王)、ドーリア(アンドレア・ドーリア、プレヴェザでのキリスト教連合艦隊の司令官)といった人物名が何の説明もなく出てくるので、予備知識は持っておいた方がいい(塩野七生女史の「ロードス島攻防記」、「レパントの海戦」あたりを読んでおけば良いと考える)。
 もちろん、備えさえしておけば、博覧強記の著者による綿密な時代考証の上に描写される海の男達の生き様が目に浮かぶだろう。

章立て

来た
 教会からモスクへ
 子供時代を忘れること……可能か?
 未来へ向かって、世界の首都イスタンブルへの航海
勝った
 祖国をもとめて
 エル・カンタラのどん詰まり
 トリポリの征服
 イタリアの海岸で
 ジェルバの勝利
 マルタの敗北
 アルジェリアの太守
 レパントの悲劇
 栄誉
見た
 権力
 チュニジアの征服
 不吉な王宮
 時代の提督
 最後の航海
 海峡の水はよどむことなく流れる
 俺たち二人はひとつの魂だった、一生を通じて
 ある改宗者の祈り
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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