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近況・新刊情報と最近読んだ本など

 この間野暮用で沖縄に行ってきたのですが、残念だなあと思ったのが予定がギチギチに詰まっていて勝連に行く機会がなかったことです。昨年9月末に勝連城(グスク)でローマ帝国のコインとオスマン帝国のコインが出土したことがニュースで取り上げられていただけに、一度現場を見に行きたかったのですが。
 オスマン帝国時代には既に勝連城は廃城となっていたそうなので、なんでそんなところでそんなものが出てきたのか非常に気になるところです。

 そう言えば、今年の大河ドラマは去年とは違った形で盛り上がっているようで。私は引っ越して以降テレビの入手を後回しにしていたのですが、やっと買えたので遅ればせながら毎週見ています。
 去年の真田家が国衆としてはかなりの勝ち組だったのに対し、今年の井伊家は「ふつう」の国衆なのでその辺の違いを見ながら楽しみたいところ。前回の放送では井伊家の男たちが揃って亡くなり、女城主直虎の登場ということになるわけですが、次回予告ではそう事はすんなり進まなさそうな雰囲気になっておりました。

 さて、新刊情報。
 山川出版社の世界史リブレット人、新刊は『ラシード・アッディーン』。
 山川と言えば『オスマン帝国治下のアラブ社会』はいつものことながら延期になったようでAmazonでは4月28日発売となっています。
 戎光祥出版「実像に迫る」シリーズ第七巻は亀田先生の『征夷大将軍・護良親王』で、発売は4月上旬。この間の『楠木正成・正行』に続いて南北朝ものということになります。
 森本先生訳のタヌーヒー『イスラム帝国夜話』下巻は4月21日。これは予想外に早く出ますね。

 以下、最近読んだ本。

■狭間直樹『梁啓超――東アジア文明史の転換』
 清末、洋務運動が西洋の技術的なうわべだけを真似ているのに飽き足らず、国家の体制の変革(「政権の転覆=革命」ではなかった)を求めたのが康有為を中心とする変法派でした。だいたい通史では康有為が中心として記されて梁啓超は二番手の扱いをされることが多いと思います。彼ら変法派が戊戌政変によって政権から逐われ、康有為も梁啓超も国外に亡命することになり、ここから先の時代は変法派よりも革命派の方に光が当たって通史でも変法派はあまり顧みられなくなっていきます。
 しかしながら、梁啓超が本領を発揮したのは亡命以降の時代でして、本書によると変法派(保皇会)の機関誌に梁が発表した論文は非常にレベルが高く、これと論争することにより革命派は自身の理論を固めていったところがあるようで。近代中国に和製漢語が逆輸入されたことはよく知られていますが、その立役者の一人が日本亡命経験があり、かつ筆で戦うことに全霊を傾けた梁であったことは疑いない模様。一方、梁に比べると亡命以降の康有為はパッとしないなあ、というのが本書を読んだ上での感想です。
 梁啓超の思想は直接継承されたわけではありませんし、その梁の思想自体がかならずしも一貫しているわけではない(現実を見るに敏であった、というところはあるのでしょうが)ですが、少なくとも言論が歴史を作る時代を招来した功績については大いに認めるべきではないかなというところです。


■岡本隆司『清朝の興亡と中華のゆくえ――朝鮮出兵から日露戦争へ』
 「東アジアの近現代史」というシリーズタイトルで講談社から叢書が出るようで、その第一回配本かつ第一巻。岡本先生は中国近代史の人というイメージがあるのですが、本書は基本的に清朝の勃興から滅亡までを書いた通史となっています。ただし、シリーズがシリーズなので近代中国の前提としての清朝通史という書き方に意図的に寄せているところはあるように思います(本書は外交や国際関係についてが強いです)。
 岡本先生の本としてはあまり目新しい知見はありませんが、よくまとまっているので岡本先生の本を色々読む前に本書を読んでおくとわかりやすいかもしれません。清朝の通史としては八旗の制度や多民族国家としての清朝という面への目配りはやや薄いので、そのあたりは別の本を当たりましょう(個人的には石橋先生の『大清帝国への道』がオススメ)。
 巻末にはシリーズ刊行予定が掲載されており、以下のようになっています(いずれも仮題)。

2 中村元哉『対立と共存の日中関係史――共和国としての中国』
3 池内敏『日本人の朝鮮観はいかにして形成されたか』
4 木宮正史『朝鮮半島のナショナリズム』
5 奈良岡聰智『近代日本の膨張と中国・朝鮮・台湾』
6 池内敏・岡本隆司[編]『台湾と琉球からのまなざし――親日と反日の帰趨』

 それぞれいつ出るのかわかりませんが、楽しみに待つことにしましょう。


■森茂暁『足利尊氏』
 副題なしでタイトルは人物名のみの直球、しかも対象は足利尊氏!
 森先生は南朝研究の方だと思ってたんですが、著作一覧を見てみると必ずしもそうではない感じですね。
 内容は現存する尊氏の発給文書(その数なんと1500点!)から尊氏像を組み立てる、という一冊でして、『太平記』『梅松論』などは補助的に利用されるにとどまっています。
 記述は概ね時系列順ではあるのですが尊氏に関する諸問題を順番に取り扱っていくような体裁なので、尊氏がいつどこで何をしたかはだいたい読者が知っている前提で話が進んでいきます。尊氏の事跡についてはある程度知っておいてから読んだ方がいいかもしれません(近年刊行の本だと清水先生の『足利尊氏と関東』が手頃でおすすめ)。
 文書にある討伐対象を示す「凶徒」の使われ方から、尊氏が後醍醐帝に歯向かったのは本意ではなかったのではないか、さらに楠木正成には一目置いていたのではないか(尊氏の文書で正成が「凶徒」と呼ばれることはなかった一方、新田義貞は特に憚り無く「凶徒」呼ばわりされている)、また、尊氏・直義兄弟が観応の擾乱においても必ずしも心の底から対立していたわけではないのではないか、という分析や、文書のやり取りから、倒幕の時期から尊氏が九州の武士との間にコネクションを持っており、京を逐われた尊氏が九州で再起を図り、多々良浜で大勝したのはそのあたりの事情が絡んでいるのではないか、といったような分析が行われています。
 九州の件については大友貞宗が尊氏より先んじて伯耆の後醍醐帝と接触していた可能性について森先生は指摘しており、尊氏の貞宗宛の書状が一歩引いたものであることもそれを裏付けているようです。
 ちょっと読むのに気力のいる本かもしれませんが、堅実な文書調査に裏付けられている本ですし、足利尊氏に関心のある向きには必読の一冊ではないでしょうか。


■荒木優太『これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得』
 私はさしあたりただの好事家ですが、世の中には在野の研究者として学術的な貢献を残した人物も少なくないようです。自身も在野研究者である荒木氏が、それら在野研究者を16人ピックアップして小列伝形式で紹介しています。在野での研究というのはトンデモに陥る可能性が非常に高いわけですが、そのあたりも含め、在野研究者として生きるための心得を彼らの生き方から学ぼう、という一冊。
 基本的に対象が対象だけに数字の話が出てこないので生存バイアスを否定できなかったりはしますが、とは言え現実に彼らが生きて業績と呼ぶに足るものを残したのもまた事実ではあります。
「比喩的にいえば、大リーグを目指していた野球少年が商社に就職し、それでもなお、休日に仲間とやる草野球大会をどう計画するか思案するリーマンの話。あるいは、アルバイトをしながら生活費を稼ぎつつ地下アイドルとしてファンたちと一緒に盛り上がる女史フリーターの話にすぎない。といっても、その野球チームのなかにメジャーリーグでも通用する豪速球を投げる者がいることを、また、そのアイドルの歌が口コミで話題となって紅白のトリを飾ることがあることを、私は固く信じているのだが」(p.7)
「<なりたい>よりも<やりたい>が先行するのが在野研究者第一の資質」(p.8)
 このあたり、あまりにも力強いので、頑張ろうとする人の背中はきっと押してくれるであろうと思います。


■中島義道『「時間」を哲学する――過去はどこへ行ったのか』
 歴史学との関連で哲学に首を突っ込んではや数年ですが、過去をどう扱うかということで時間論にもちょっと手を出してみました。結論から言うと、アテは外れた感じですが、現象学的前提の中で「時間」を考察しようとする時、どういう手続を踏み、どういう論理展開になるのかということは垣間見れたのでそれはそれで収穫だったかなとは思います。
 哲学史の展開を押さえて、著者と前提を共有しておくのは大事だなあということがわかった一冊でした。
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
当ブログの内容を雑誌・書籍等にご利用されたい場合はご一報下さい。
管理人への連絡は掲示板か拍手でどうぞ。

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