アラブが見た十字軍/アミン・マアルーフ


 十字軍史の基礎知識を西洋史側の資料で固めた後は、この本でアラブ側の見方も知ってもらいたい。文庫でありながら1500円とあって、かなり分厚い本だが、しっかりと読み通せば歴史の記述が如何に中立性を保つのが難しいかが分かるだろう。
 第一回・第二回十字軍については日本で資料が少ないので予備知識を備えるのも難しいだろうから、高校世界史で習う第三回周辺以降の9~14章を始めに読むことを勧めておきたい。
 6~8章については日本語版Wikipediaにも資料がそこそこあるので、調べる気力があれば読める。
 1~5章は人名・地名の把握がかなり面倒だ。読むには気力がいる。地図と人名のメモは手元に置いておきたい。

 作者はレバノン出身でフランス在住のジャーナリストで、両親とも宗派は違うがキリスト教徒だったらしい。彼はその経験による視点から、十字軍をついに打ち負かしたイスラム世界が、何故現在西洋に追い抜かれているのかという点を終章で考察している。単に、アラブ側の主張をそのまま持ち出すのではなく、最後に独自の見方を提示している点に好感が持てる。

 多く当時の年代記作家による文章を引用しており、巻末の参考資料も充実しているので十字軍時代に興味のある人にとっては必読書である。

章立て

序章 千年の対立ここに始まる
I 侵略(一〇九六~一一〇〇年)
 1 フランク来たる
 2 鎧師の裏切り
 3 マアッラの食人種
II 占領(一一〇〇~一一二八年)
 4 トリポリの二千日
 5 ターバンを巻いた抵抗
III 反撃(一一二八~一一四六年)
 6 陰謀渦巻くダマスカス
 7 蛮族<フランク>の中の一貴紳
IV 勝利(一一四六~一一八七年)
 8 聖王ヌールッディーン
 9 ナイル目指して
 10 サラディンの涙
V 猶予(一一八七年~一二四四年)
 11両雄、相見えず
 12「公正<アル・アーディル>」と「完全<アル・カーミル>」の時代
VI 追放(一二四四~一二九一年)
 13モンゴルの鞭
 14神よ、二度と彼らに足を踏み入れざらしめんことを
終章 アラブのコンプレクス
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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