近況・新刊情報と最近読んだ本など

 久々に連載記事を書き始めたわけですが、手を付けてなかった洋書を読んでいくと書こうと思っていたことと真逆の記述があって頭を抱えている管理人です。……いやはや、趣味とは言え先行研究はちゃんと把握しておくべきですね。

 ところで、だいぶ前からトルコ本国などで人気だということで話題になっていた歴史ドラマ『華麗なる世紀』が日本でもCSで放送されるそうで(公式サイトはこちら)。『オスマン帝国外伝』というタイトルになっており、じゃあ正伝はどこやねん、というツッコミはあるわけですが、まあトルコドラマの日本上陸自体は歓迎したいところです。
 このドラマ、基本的に宮廷が舞台なので日本の大河ドラマよりも韓ドラの宮廷ものに近い雰囲気があるんですが、日本でどう受け入れられるのか気になるところです。

 さて、新刊情報。
 中公新書7月は渡辺克義『物語 ポーランドの歴史――東欧の「大国」の苦難と再生』 、亀田俊和『観応の擾乱――室町幕府を二つに裂いた足利尊氏・直義兄弟の戦い』 、桃井治郎『海賊の世界史――古代ギリシアから大航海時代、現代ソマリアまで』と、面白そうな本が三冊も出ます。『応仁の乱』のヒットが話題になって久しいですが、『観応の擾乱』はそれに続くことができるんでしょうかね。物語シリーズとしては意外なことにポーランドはまだ出てなかったのか、というところ。こちらも楽しみです。
 平凡社からは新シリーズ「中世から近世へ」という叢書が創刊される模様。第一弾は7月で柴裕之『徳川家康』と黒田基樹『羽柴家崩壊』ということの模様。四六判で1700円とのことなので割と手頃なシリーズになりそうです。
 また、アブー・スラミー『イスラーム騎士道』という本が作品社から8月に。フルースィーヤを扱った本になるんでしょうかね。類書が無いのでマストアイテムになりそうです。

 以下、最近読んだ本(今回は二冊のみ)。
 

■小野寺史郎『中国ナショナリズム――民族と愛国の近現代史』
 岡本隆司先生の本もそうなんですが、中国近現代史の本はやや時事便乗っぽいタイトルをつけて人を釣るようなところがある気がします。本書も著者は中国近現代史の専門家で、通り一遍の現代中国の分析に終わらず、清末以降の中国ナショナリズムの形成について通時的に分析していく内容となっています。
 本書の特徴は上からの公定ナショナリズムと下からの草の根ナショナリズムを分け、その二つが時に同じ方向を向き、時に相克しあいながら現代の中国ナショナリズムと政治の関係が作り上げられてきた、という見方を取っていることです。
 現在の中国の公定ナショナリズムは漢民族と少数民族を併せた「一体不可分の中華民族」という見解を取っているわけですが(この直接の創案者は費孝通)、どうも清末の時期から中国ネイションの範囲をどう定めるかという点では議論があったようです。清朝の版図を前提とし、その範囲に棲む人を等しく国民とする国民主義的ナショナリズム(同時代で言うとオスマン主義に近い)はそこそこ起源が古い模様。
 射程は2016年までとなっており、現代まで連続して理解することができます。この点は歴史学者の書いた本としては珍しいと思われます。話が始まるのが清末からなので、清末の状況の下敷きとなった前近代の中国の自他認識については岡本先生の『中国の論理』を読むのがいいのではないでしょうか。


■金松誠『松永久秀』
 戎光祥出版の実像を知るシリーズ、今回の新刊は松永久秀でした。ネット上では爆死伝説がクローズアップされてなぜか爆弾魔扱いされている久秀ですが、本書によると爆死したというのは後世の風説の模様。それだけではなく、梟雄扱いされがちなそれぞれの事象(特に、信長が久秀の三つの悪行を紹介したという逸話)についても、色々と尾ひれがついた結果である、ということの模様。
 私も久秀についてはよく知らなかったんですが、本人の勢力範囲はあまり大きくないものの、それが中央に近いことと、中央政権への直接の影響力なんかを見てると、なかなかおもしろい立ち回りをしてる人だなあと思います。
 また、天守閣の創案者であるということも有名ですが、彼の城郭建築についてもけっこう記述が割いてあるのも本書の特徴でしょうか(著者は城の研究をしていて久秀を調べることになった、という経緯のようです)。
 久秀の伝記で手頃なものと言えば本人の知名度の割に存在していなかったので、この一冊はなかなか貴重であると思います。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
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