大野誠『ワットとスティーヴンソン』


 世界史リブレット人の一冊。副題は「産業革命の技術者」。
 
 ワットとスティーヴンソンは高校世界史Bでも重要項目となっている蒸気機関および蒸気機関車の技術を確立させた技術者であるが(科学史ではなく)技術史においては産業革命の影響の大きさもあって、まず第一に名前の挙がる人物であろう。
 本書冒頭によると、彼らの事績を最初に取り上げ広く知らしめたのは『西国立志編』(原題はSelf Help)であったという。英国において、彼らのような技術畑の人間は伝統的に低く見られていたが、『西国立志編』は身分の上下に関わらず勉強忍耐の人を取り上げたところに特色があり、当時脱亜入欧を目指していた日本では広く読まれたようだ。

 本書の主眼は『西国立志編』のような教訓を引き出すわけではなく、また純技術史の話をするわけでもなく、彼らが立身できた社会と、その中での技術との関わりについて述べるところに置かれている(要所要所で技術の話は出てくるが)。
 ワットもスティーヴンソンもそれぞれ生い立ちから晩年まで時系列順に経歴が述べられる。彼らと同じく産業革命の前史において重要とされるジョン・ヘイが悲惨な末路を辿ったのに比べると、彼らの経歴に共通しているのはそれなりに大成し、その正統な報酬を得て晩年を過ごしたということだ。彼らに共通するのは、議会と交渉を持っていた部分であり、技術者と議会の近さが社会における技術者の歴史を考える上で重要であろうと著者は述べる。
 産業革命は単に技術だけの問題ではなく、社会的な前提あってのものであるが、その一面を人物から見ることができる面白い一冊となっていると言えるだろう。
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鉄勒京二

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