佐藤彰一『剣と清貧のヨーロッパ』


 副題は「中世の騎士修道会と托鉢修道会」
 
 最初にタイトルだけを見た時はてっきり「正戦/聖戦」と「清貧」の対立しかねない二つの思想の成り立ちと相克のようなキリスト教思想史に寄った本かと思ったのだが、実はサブタイトル通り、騎士修道会と托鉢修道会についての成り立ちと組織構造、通時的活動内容(騎士修道会に関しては戦闘のみならず領地経営や金融業、通商なども含む)、そしてその歴史の中で歩んできた道筋というものを解説している一冊だった。
 扱われているのは騎士修道会としてテンプル騎士修道会、ホスピタル騎士修道会(いわゆる聖ヨハネ騎士団)、ドイツ騎士修道会に加え、イベリア半島の騎士修道会にも一章が割かれている。托鉢修道会としてはフランチェスコ会とドミニコ会、そしてそれらと関わりの深い存在としてベギン派が取り上げられる。
 騎士修道会に関しては橋口倫介氏の『十字軍騎士団』というスタンダードと化していた本があるのだが、本書は当然のこと最新の知見を反映しているのに加え、ドイツ騎士修道会、イベリア半島の騎士修道会にもページが割かれており、痒いところに手が届く。

 個人的に面白かったのは金融システムを発達させていたテンプル騎士修道会(これは騎士修道会が国境を超えて広がる組織であったから可能だった)に対し、ドイツ騎士修道会が領地内の交易と中継貿易を掌握し資金源にしていたあたりか。いずれであれ、一国史からではなかなか見えてこない部分であって面白い。

 なお、騎士修道会であれ托鉢修道会であれその活動領域からちょくちょくムスリム政権の勢力圏との関わりがあるのだが、部分的に表記揺れで日本ではあまり使われない読みになっているものがあるので注意したい(例えば「メリニド朝」→「マリーン朝」など)。
 ともあれ、中世西欧史の醍醐味が詰まっている本であり、少しでも興味があるなら一読をおすすめしたい一冊である。
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鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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