戸崎哲彦『柳宗元』


 世界史リブレット人の一冊。副題は「アジアのルソー」。
 
 柳宗元と言えばどちらかというと個人的には詩人としての印象が強い(手元にも岩波文庫の『柳宗元詩撰』がある)のだが、彼は思想家としてもかなり独特の人物である(もっとも、彼が突然変異的に現れたわけではなく、当時の唐の官僚たちの潮流の中から彼が現れたということも述べられている)。

 時は安史の乱がなんとか収束し、王叔文政権の永貞革新が進められていた頃。唐王朝は寿命の長い王朝であったので、高校世界史でも初唐、盛唐、中唐、晩唐という時代区分は示されるが、それぞれがどのような時代であったかについてまではあまり詳しく語られない。舞台は中唐にあたり、本書ではその背景も含めて詳しく語られている。
 柳宗元自身は詩文は評価されこそすれ、その思想・言動については毀誉褒貶あった(友人であった韓愈からも批判されている)人物だが、その中身はというと、基本的に政治において「天」の意のようなものを排除し、皇帝の正当性の担保には社会契約説的な説明を行い、また迷信の類を厳しく批判している。
 結局柳宗元は左遷されることにはなるのだが民衆の間では親しまれる存在であったようでもあり、また近代中国においては「中国のルソー」黄宗羲の大先達として評価され、また「東洋のルソー」中江兆民も柳宗元を高く評価していた。

 いささか文章が漢文書き下しめいており、やや読みにくいところはあるのだが、そうは言っても柳宗元について手頃に知ることができる一冊であるという事実はそれを補って余りあると言えるだろう。
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鉄勒京二

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