海賊キャプテン・ドレーク/杉浦昭典
副題は「イギリスを救った海の英雄」。
87年に中公新書で出版されたドレークの伝記が、今年の4月になって講談社学術文庫で復刊されたもの。
某映画や某漫画で海賊ものが流行って久しい。その流れか否か絶版となっていたこの本も、収録先を変えて再刊された。
まあ、個人的に海賊提督と言えばハイレディン・バルバロッサなのだが……世界的にはドレークの方が有名だろう。
スペインの無敵艦隊アルマダを破ったこの男の人生も滑り出しは、血のメアリ治下のイングランドでプロテスタントとして生まれた以上、順風満帆ではなかった。しかし、彼はホーキンズに見込まれ、様々な航海を体験し、卓越したカリスマを育て、最期にはやはり洋上で亡くなった。彼は戦闘以外での流血を好まず、朝夕の祈祷を欠かさなかったという。
その人生が、波乱の印象そのままにコンパクトにまとめられている。文章も分かりやすく、物語としてのおもしろさも充分である(逆に言えば、少々イングランド寄りではあるが)。
時折、ドレーク絡みの文章で名前は出てくるもののドレークの陰に隠れがちなジョン・ホーキンズ船長についても、それなりにページを割いてあるのが嬉しい。
巻末には同時代周辺の帆船などについての説明がイラスト付で掲載されており、イメージの助けにもなる。
章立て
第1章 大航海時代の開幕
第2章 冒険商人西へ
第3章 パナマに現れた海賊
第4章 海賊船地球を回る
第5章 無敵艦隊来りて去る
第6章 提督洋上に死す
それにしてもアルマダの司令官職を押しつけられたシドニア公はいささか不憫である。