近況・新刊情報と最近読んだ本など

 もう二月ですが改めて今年もよろしくお願いします。新年一発目の記事はまさかのセンター試験ネタでしたが、まあこれはちょっと書いておかないといけないなと。結論自体は煮え切らないものになりましたが。

 さて、新刊情報。
 岩波新書3月、10講シリーズの新刊はイタリアの模様、北村暁夫『イタリア史10講』 。
 同じく岩波から単行本エチェンヌ・ドゥ・ラ・ヴェシェール『ソグド商人の歴史』。こちらは2月7日発売なのでもうすぐですね。
 角川新書3月、大木毅『「砂漠の狐」ロンメル ヒトラーの将軍の栄光と悲惨』 。著者が大木先生なので歴史学寄りとは言え角川でこの手のテーマは珍しいような?
 中公新書2月、野村啓介『ナポレオン4代』。ナポレオン1世、同3世ならともかく、4代という枠組みで扱うのは珍しい気がしますねえ。
 また、刊行時期は未定ですが名古屋大学出版会から小川道大『帝国後のインド――近世的発展のなかの植民地化』。「イギリスによる統治政策の導入と浸透はなぜ可能となったのか。帝国の衰退と後継国家による群雄割拠のもと生じた在地の大変動から条件を探り、暗黒史観を覆す」とのこと。A5判448頁6800円と重量級の本ですが面白そうです。
 京都大学学術出版会より、岩本佳子『帝国と遊牧民――近世期オスマン朝の視座より』。こちらは今月発売。
 ちくま学芸文庫3月、前田耕作『バクトリア王国の興亡 ヘレニズムと仏教の興隆の原点』。
 あまり聞かない出版社ですが現代政治経済研究社2月、アッラーマ・ヒッリー『イマーム位を知るための高貴なる道』。ヒッリーは十二イマーム派の学者で、フレグ・ウルス時代に活躍した人物ですね。

 以下、最近読んだ本と観たDVDなど。
 

■南塚信吾『「連動」する世界史――19世紀世界の中の日本』
 岩波書店の新シリーズ、「日本の中の世界史」の第一回配本。
 帝国主義の時代においては世界各地の緊張関係の焦点がいずこにあるかが重要で、焦点となっていない地域においては域内事情の進展が見られる、ということを前提に、日本が明治維新を行えた環境、大陸への進出を可能とした要素などを確認していっています。バルカン化、という概念が面白いところ。
 南塚先生の本は『義賊伝説』以来ですがハンガリー史から離れてグローバルヒストリー的な仕事もされているのだなあと。
 横軸で近代世界の動きを確認するのにも便利なので余力のある高校生は世界史Bの副読本としてもいいのではないでしょうか。


■木畑洋一『帝国航路をゆく――イギリス植民地と近代日本』
 アジアのイギリス植民地を結ぶいわゆる帝国航路(エンパイア・ルート)。日本人が西洋へ渡る再には多くの場合このルートを通ることになります。本書は帝国航路に枠を設定してその路中での日本人の現地への眼差しを取り扱った一冊。
 どうにもエピソードを拾い上げて束ねた本という印象は拭えないのですが、世界史の動きが日本人の認識に与えた影響、そして日本人の世界認識の変遷みたいなものは、確かに著者が最後に述べている通り跡付けできてると思われます。
 個人的にはセイロン島でウラービーと出会った日本人たちについて記述があったのが嬉しかったところ。


■J・L・オースティン『言語と行為――いかにして言葉でものごとを行うか』
 言語行為論の古典です。ハーバーマスが影響を受けているということもあって読書。オースティンは、我々は言語を通じて何らかの命題を示しているだけではなく、発言を通じて行為したり、発言そのものが行為となるような事態を惹起している、というような議論を行っています。
 ハードカバー版でかつて和訳が出ていましたが、この講談社学術文庫版は新訳となります。言語哲学の本なのにすこぶる読みやすくて助かりました(と、いうのはウィトゲンシュタイン関連が難解すぎるからなのですが)。
 言語行為の類型についてはざっと確認したという感じであまり頭に入れていないのですが、必要とあらば再読したいところです。


■ハリー・G・フランクファート『真実について』
 翻訳がひどいと一部で評判ですが、まあ大意としてハーバーマスの(ハーバーマスの名前は一度も出てきませんでしたが)コミュニケイション理論で言うところの「生活世界の植民地化」を真実性の部分に絞って論じた話のように読みました。
 大して厚い本でもないのでもし引く必要があったら原文読もうと思います。


■ジャン=フランソワ・リオタール『こどもたちに語るポストモダン』
 数年来月イチくらいの頻度で三ノ宮の某古本屋をのぞいているのですが、やっと見つけて喜び勇んで買った一冊(まあネットで探せば中古の在庫はどこぞにあるんでしょうがそこまでする気にならなかった塩梅の本)。そのまんまの勢いで読んでしまいましたが実は『ポストモダンの条件』をまだ読んでないんですよね。
 それでも冒頭からハーバーマスへの当てこすりがあったり、まあなんとなく雰囲気はつかめたような気がします。


■『塚原卜伝』
 堺雅人さん主演の時代劇ドラマ、NHK制作で全7話。塚原卜伝というと実像より講談由来の逸話のほうが独り歩きというか堂々闊歩しているような人物ですが、このドラマでは若くして武者修行のたびに出るところから卜伝を名乗るようになるまでが描かれています。もとはBSで放送されたもので、地上波で再放送もされたんですがうっかり見逃していたので今回購入しました。
 さすがというか安定の役者とNHKの技術で安心して観られる作品だったと思います。平岳大さんも最近は『真田丸』の武田勝頼とか『関ヶ原』の島左近とかのイメージが強かったのですが、こういううだつの上がらない役もできる人だったんだなあなどと。
 時代背景も室町末期というやや珍しい時期で、小道具にも色々こだわった模様ですねえ。
 大河と違って割とすぐ見終われるので興味のある方はぜひ。
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鉄勒京二

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当ブログは一介の歴史好きが読んだ本を紹介したり、書いた文章を公開したりするための場です。執筆記事は西アジア史関係が多いですが、読書は西アジアにこだわらず地域・時代を広く浅く扱っています。
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