開国ニッポン/清水義範


 パスティーシュ作家清水義範氏の手による歴史if。
 とはいっても、学研から出ているような架空戦記物ではなく、開国した日本の歴史が少しずつ変わっているという言うなれば歴史パロディ。
 日本史ものではあるが、鎖国していた日本が江戸時代の間中開国しているのでこのブログで取り扱うことにした。
 
 以前、この作者の「疑史世界伝」の文庫版である「目からウロコの世界史物語」を紹介したが、その姉妹作に「偽史日本伝」という本がある。世界伝の方が「疑」であり、世界史を履修していないような日本人のなんとなくの常識を疑う本であるのに対して、日本伝の方は「偽」であり嘘をちりばめた歴史パロディの短編集であった(ただまあ、宗春の話などは普通の歴史小説としても通用しそうな短編だったが)。この「開国ニッポン」はその歴史パロディを江戸時代をぶっ通しでやってしまおうという作品である。

 家康は、増えるキリシタンに悩んでいた。キリスト教は、幕府にとって都合が悪い教えだったからである。しかし、キリスト教を閉め出すためだけに諸外国との交流を打ち切り、国の発展を止めてしまっても良いのかとも思っていた。折、家康に仕えていた三浦按針(ウィリアム・アダムス)が家康に宗教をコントロールするイスラムの知恵、ジズヤの制を伝える。
 三代将軍光家はアダムスから聞いたジズヤの制をもとに「諸宗門法度」なる法令を発し、キリスト教徒に「切支丹冥加金」を課しキリスト教を禁止せずしかもキリスト教があまり広がらない策を採った。このことにより、幕府は鎖国をする必要が無くなり、諸外国と大いに交流することとなるのだった。

 とまあ、そういう筋書きで始まる物語だ。
 基本的な日本史の流れは変わらない。綱吉は犬公方で生類憐れみの令を出すし、吉宗は幕府のタガを締め直すし、攘夷運動がおこり、明治維新も起きる。
 ただし、由井正雪や、平賀源内、坂本龍馬などの人生が、少しずつ変わっている。悲劇として語られるはずの話が、なんだか「いい話」になっているのは作者の優しさだろうかと思う。

 日本史好き、世界史好き、両方にお勧めできる本である。

章立て

第一章 按針と家康
第二章 切支丹冥加金
第三章 お春と由井正雪
第四章 元禄流行事情
第五章 吉宗と宗春
第六章 風来山人世界漫遊
第七章 安政の大欲
第八章 幕府瓦解

 この作者の歴史ifには以下のようなものもあり、どれも評判が悪くない。今のところ紹介する予定は無いので、ここにリンクを貼っておく。
偽史日本伝
幕末裏返史
金鯱の夢
プロフィール

鉄勒京二

Author:鉄勒京二
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