佐藤彰一『禁欲のヨーロッパ』


 副題は「修道院の起源」。
 
 著者の佐藤彰一氏の専門は西洋中世史だが、本書が取り扱う時代は古代末期が大半だ。著者が本書と同じく中公新書から出版した事実上のシリーズものに『贖罪のヨーロッパ』、『剣と清貧のヨーロッパ』(これら2つは中世)そして『宣教のヨーロッパ』(こちらは近世)があるが、本書はそれらの先駆けとなる時代を取り扱っているということになる。

 修道院の成立を解くにはまず禁欲について語らねばならない。そこで本書は古代ギリシア・ローマの養生術から話をはじめる。そこからローマ社会の様相(男女の非対称性や種々の欲望の捉え方、結婚事情など)に話が進む。このあたりは明るい古代のイメージを抱いていると、その逆のなかなかダークな部分が見えてきて印象深い。
 以降、禁欲のキリスト教との結びつき、修道院内部での禁欲の具体的な様子、修道院というシステムの広がりを担った人々などに話が及ぶ。

 一般に断絶がイメージされがちな古代と中世だが、70年代、ピーター・ブラウンらの古代末期論により古代と中世は古代末期という独自の時代によってゆるやかに繋がっているという見解が現れた。本書は、中世以降現代までその営みが続く修道院というシステムについて、古代に起源を求め、古代末期を中心に叙述することによってその成立を連続して理解することができるようになっている。
 やや総花的な解説になっていて焦点が絞られていないところはあるが、概説書でこの分野の歴史について述べた最近の本となるとあまりないので読むべき一冊であることに変わりはない。
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鉄勒京二

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