佐藤彰一『贖罪のヨーロッパ』


 副題は「中世修道院の祈りと書物」。帯の裏面には「聖ベネディクトからシトー派まで」とある。
 
 同じく中公新書から出ていた著者の『禁欲のヨーロッパ』の直接の続編ということになる。前著が6世紀頃までを対象としていたのに対し、本書では(一部重なる時代もあるが)5世紀から12世紀頃が対象となる。この時代にあって、修道院および修道制がどのように変遷し、またどのように社会と関係していたかが綴られる。

 メイントピックは2つある。タイトルにある「贖罪」はその修道制のバックグラウンドにあったと想定される思想であり、前著で語られた克己的「禁欲」が「贖罪」へと発展していく(これにはアイルランド修道制が画期となっており、第四章で詳しく語られている)。
 一方サブタイトルの「書物」については修道生活とも結びついた写本制作についてのトピックとなる。これは哲学的手法に裏打ちされた神学に関する著作の成立とその広がりが関与している。一般に、9世紀のバグダードに100件以上の書店が軒を並べていたようなイスラーム世界と比べると同時期のカトリック世界は書物が軽んじられているような印象があるが、そのような状況下でも知の継承と伝達に修道院が一役買っていたことが分かる。

 例によってメイントピックの他に細かい中世史の論点があったり、本論の前に確認しておくべき前提事項についての記述がかなり厚めになっていたりするので、読む時は本論について見失わないようにしたい。また、イスラームに関連する表記(特に人名)も一般的なものとは違いかなり古い表記になっている部分もあるので注意が必要である。
 とは言え、前著と併せて読むことによって修道院・修道制のみならず西ヨーロッパの中世社会について理解が深まる一冊であることに違いはなく、興味のある向きには必読だろう。
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鉄勒京二

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