野田仁・小松久男[編著]『近代中央ユーラシアの眺望』


 ソ連崩壊以後、発展を遂げてきている近代中央ユーラシア史研究の最新の成果をわかりやすくまとめた論集。
 
 近代の中央ユーラシアは有り体に言って地味な対象だと思われがちである。火器の登場によって騎馬遊牧民の時代は遠くなり、イスラーム世界の中心地も南方あるいは西方に偏り、やがてロシアと清朝に併呑され、歴史の表舞台から遠ざかる。
 しかしながら、実際は近代中央ユーラシアはダイナミズムの生き残り続ける地域であった。
 時に近代化を巡って人々の間で激論が起き(第4章、第11章、第12章)、経済は世界と結びつき(第7章、第9章)、域外からも連帯の声が響き(第10章)、ロシアに飲み込まれながらも時にロシアを利用し、時にたくましく抵抗する(第2章、第6章)。
 遊牧社会(第1~4章)と定住社会(第5~8章)はなおその区別を保って有機的に歴史を紡いでおり、この有機的なシステムはムスリムのネットワークを通じ、域外社会ともつながっていた(第9~13章)。
 扱っているテーマは広く、興味ある部分だけを拾い読みしてもよいが、通読することによってこの時代の中央ユーラシアのダイナミズムの一端を実感することができるだろう。
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鉄勒京二

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